11:1[saga]
2018/03/17(土) 23:54:58.97 ID:Kkr9l5xs0
8.
夜、だった。
夢をみていた。多分、幸せな夢を。
「ゆ、唯……」
「澪ちゃん! あずにゃんは!?」
「落ち着け唯!」
近くにいた澪ちゃんが私に近づいてくる。私は起き上がろうとしたけれど、上手く動くことができなかった。
「あ、あずにゃんが……あずにゃんが!」
「落ち着け!!」
澪ちゃんは私を抱きしめた。頭を撫でてくれた。いつの間にか流れていた涙が澪ちゃんの肩を濡らす。
息が苦しい。身体が震える。息が苦しい。息ができない。
澪ちゃんが何か耳元で囁いていたけど、何を言っているのかは分からなかった。
5分くらい経った後、呼吸は少し落ち着いた。澪ちゃんは私を離して、言い聞かせるように、私の手を握って言った。
「唯はすぐ気を失って、その時に地面に頭をぶつけたんだ。その怪我は大したことない」
そんなことはどうでもいい。
「あずにゃんは……?」
「……梓は…………」
澪ちゃんはもう一度私を抱きしめた。
それが答えだ。
これが現実だ。
「……即死、だったそうだ」
何も見えなかった。何も聞こえなかった。
何も、何もかもいらなかった。
あずにゃんのいない、この世界は。
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