「私は同級生の乙倉悠貴に厄介な感情を抱いてしまった」
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9:名無しNIPPER[sage]
2018/03/11(日) 23:56:01.21 ID:whiyQo92o


 その後のことをよく覚えていない。あのあとどうやって家に帰ったのかすら記憶の彼方に消え去っているほど朧気だ。
 たぶん、中身のない、甘いスイーツみたいな会話をしていたような気がする。
 気持ちとしてはスイーツどころかピーマンのように苦くて、トマトのように気色が悪かったというのに、取り繕うことだけはどうにも上手だったらしい。
 日常的に役割を演じている私にとっては、自分の気持ちを誰かに見せないようにするなんて簡単なことだった。
 なんて、実際のところはわからない。
 記憶は既に思い出せないほどに霞んでいるし、ぽやぽやしているようで人のことをよく見ているあの子だから、敢えて触れてこなかっただけかもしれない。
 吐き出す息はどす黒い、どぶのような色をしている気がした。感情を吐き出しているのか、魂が抜け出しているのか。
 感情は澱んで濁っていた。
 暗闇に囚われていた。
 所詮、私は世界においてモブでしかないただの一般人A。だから、アイドルである悠貴とはまるで住む世界が違うこともわかっていたつもりだった。
 ただ、悠貴の友達でいられるだけでも幸せなことだと理解していたのに。

 悠貴のあの笑顔を見て、私は心身共にぐちゃぐちゃになってしまった。

 口の中は鉄の味しかしないし、思い出す度に喉の奥から肺にかけてずきんずきんと痛みが駆け抜けていく。
 痛いから、胸を掻き毟る。爪を立てて握る。別の痛みでごまかそうとして、だけどそれでも上書きされていった。
 これは何を意味する痛みなのか。私は知っていた。
 初めて経験したけれど。
 たぶん、そういうことだ。



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