「私は同級生の乙倉悠貴に厄介な感情を抱いてしまった」
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8:名無しNIPPER[sage]
2018/03/11(日) 23:55:30.49 ID:whiyQo92o

 校門で立っていた、私が知らない大人に、今まで私が見たこともないような表情を見せている悠貴がいた。
 うまく言葉にできない。笑顔なんだけど、私が知っているものではなくて。それはたぶん、悠貴の特別な表情だった。
 私が知らなくて、あの大人だけにしか見せない、悠貴の表情だ。

 ずきんと、喉の奥が痛くなった。それから、頭の中が脈を打つようにじんじんとする。息が荒くなっているような気がして、唾液をたっぷりと飲み込んだ。
 今の私の顔はミドリムシよりも緑色になっているんじゃないかというくらいにざわざわと心が落ち着かなくて、胃から何かが込み上げてきそうになっていた。
 愛想笑いを浮かべようとしたが浮かばない。冷たい汗が背中をだらだらと流れていって、全身の熱が無くなった。自分の体温がわからない。もしかしたら私は死んでしまったのかと思うくらい。
 治まらない喉の奥の痛みと、ミミズが頭の中を這うような気持ち悪さが生きていることを思い出させてくれて、いっそこのまま気絶してしまいたいくらいだ。
 初めて知る感覚だった。
 ……知りたくなかった感覚だった。

 一緒に帰っている友人は、そんな私のことなんて全然気にもかけずに、のほほんと、今頃悠貴と大人の姿を見つけたのか目をきらきらとさせていた。

「わぁ〜、かっこいい大人の人だぁ。お仕事のお迎えかなぁ? ゆうきちゃんの。大人って感じだねぇ。ねぇ?」

 そうだねと頷くには、私のコンディションはあまりにも最悪だった。


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