「私は同級生の乙倉悠貴に厄介な感情を抱いてしまった」
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7:名無しNIPPER[sage]
2018/03/11(日) 23:55:03.62 ID:whiyQo92o



 ある日のことだった。一日の授業が終わって、部活もやっていない私は同じく帰宅部である友人と下校しかけていた。
 悠貴は陸上部に入っているから、学校が終わるとさっさと学校を抜け出す私とは一緒に下校することはない。それに部活がなくても悠貴はアイドルだから、テレビやライブの仕事の都合があるし、やっぱり一緒に帰るということは少ない。
 そのことに関して、やっぱり少し残念に思うけれど、何事にも一生懸命な悠貴は凄いと思うし、応援したくなる。
 だから今日も、私は悠貴とは別に自堕落な中学生らしく、だらだらと友人とお喋りをしながら帰宅しようとしていた。
 いつもの校門が、見慣れない景色になっていた。
 校門にスーツ姿の大人が立っていた。下校をする中学生がたくさん校門を通っていく中で、その姿はどうにも場にそぐわない。完全に浮いていた。
 学校の先生もスーツを着ていることはあるけれど、誰も彼もがよれよれでくたびれていて、なんだか情けなく見えるのだけど、その大人は違った。パリッとした、まるで下ろし立ての新品のように綺麗なスーツだ。服装だけで判断をするなら、まともな大人の人だ。
 中学校の校門で明らかに誰かを探している素振りだというのに、清潔感があるというだけでなんだか怪しさを感じさせない。
 服装というのは人に与える印象の中でも特に強いものなのかもしれない。
 私がその大人のことを考察していると後ろから誰かが走ってくる。鞄が揺れるときの擦れるような音と、靴が跳ねるときの叩くような音が力強く耳に障る。
 風を切る音が私の横を過ぎていった。
 駆け抜けて行った後ろ姿は、走る勢いで制服のスカートが大きく翻って膝裏どころか太腿まで露出してしまっている。
 ああもう、と私は思った。
 駆け抜けて行った、悠貴の姿に、なんて警戒心の薄い子なんだと焦っていた。
 だけどそんな焦りは、あっという間に違う感情に塗りつぶされていった。


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