217:亜人好き ◆HQmKQahCZs
2018/12/03(月) 14:35:03.71 ID:KpvaPj/X0
その横にはあの人間の男の姿。どうやらミレイアを慰めているらしい。
結局ミレイアのしたいことは上手くいかなかったみたいだ
ミレイア「………っ」
声をかけるとミレイアはキッとこちらを睨みつけてきたがその瞳にいつものような力はなく、どこかか弱いような印象を受けた。
ミレイア「なによ。ミレイアちゃんを笑いにきたの?」
ミレイアを笑う理由はない。今のミレイアを見て笑う趣味もない。
少年「なにがだ…ですか?」
訳が分からず聞き返すとミレイアは自嘲気味に右の口角を少し上げた。
ミレイア「ミレイアちゃんのデザートが盗まれたこと。どうせお父様に報告するんでしょう?」
聞こえてきたデザートとはそういうことか。どうやら聞こえてきたデザートという単語はミレイアのデザートが盗まれたということらしい。
デザートを盗まれたまぬけが怒り狂うなんてのはコメディ染みて実にお笑い種だ。
男「あぁ、走り回ってましたね」
だけれど笑わない。この騒動の裏にあるミレイアの苦悩を察してしまったからだ。
ミレイアの口から出てきたお父様という言葉。ロード家という名家に捕らわれ眼の下に隈を作ってまで努力をするミレイアが怯えるもの。
優秀な家族から押される出来損ないの烙印。
身内が完璧であるからゆえに恐れる自分自身の瑕。
ミレイア「………いいわよ。言いなさいよ! ミレイアちゃんは自分のものもちゃんと管理できない出来損ないだって!!」
自らが抱える恐怖をミレイアは自暴自棄気味に吐き出した。
他人ならばただの笑い話で済んだこと。
だがミレイアはそんなことですら自らの過失と捕らえて、振り回されている。
そんなミレイアを笑えるだろうか。
酷く不器用で、いじらしさすら覚えるこの姉を。
俺は笑えない。
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