【バンドリ】氷川日菜「あまざらしなおねーちゃん」
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53:名無しNIPPER[sage]
2018/03/01(木) 09:11:54.21 ID:ueeqel/10
2月27日
今日、日菜にギターの弾き語りを聞かせた。
それには大きな意味があって、もしかしたら日菜はそれを汲んではくれないかもしれないという危惧があった。
しかし、心のどこかでは日菜を信じていた。きっと今の日菜ならば、私の気持ちを分かってくれるだろうという信頼があった。
おかしなものだ。そして、なんとも現金なものだ。
あれほど拒絶していた日菜を信頼して、こんな時だけ、自分の気持ちを分かってもらいたいだなんて。
しかし日菜はどうであったか。私の弾き語りを聞いて、それだけで、言いたいことも私の葛藤も全部分かってくれた。
まったく、本当にあなたは何でも出来るのね。そう思いもしたが、決して嫌な気持ちではなかった。むしろ、呆れたような、困ったような感情もあるが、それは嬉しいものだった。
ただ、日菜の胸で泣いてしまったことは今思い出すと恥ずかしかった。
その行動は姉としての威厳が微塵もない。素直に身を委ねたことを思い出す度に顔が熱くなる。
……それは今は置いておこう。
私は私自身に向き合うと決めた。だから失った記憶もさっさと取り戻してしまいたいし、遅れた分の勉強だって早くしなければいけない。
……さて、どうすれば記憶が戻るのだろうか。
やはり、私が私でなかった期間――いや、この表現はもうやめにしよう――私が大切にしていたという思い出にきちんと触れなければいけない。
恐怖心が完全に拭えたかというと未だにそんなことはなかった。だが頑なに目を逸らし続けるほどのものでは、もうない。
今の私となくした私の共通点はなんだろう。少し考えてから、やはりギターなのかしら、と思い至る。
そうだ、ギターだ。ギターを弾いて、歌を歌おう。
だがそれだけでは駄目だ。日菜がそうだったように、きっと2月の私は、色んな人に触れて考え方もずっと変わっているはずだ。誰かに触れなければいけない。
そうして考えているうちに行きついたのがロゼリアだった。
名前は知っている、だが顔は知らない彼女たちの前で演奏してみれば、触れてみれば、何かが変わるかもしれない。
よし、と自分自身に気合を入れる。まず手始めに何をすればいいか。そうだ、弾く曲を考えよう。そう思ったところで、ふと、スマートフォンが目についた。
そういえば、私が演奏したという曲がこの中には入っていた。記憶をなくしてから最初に触れて以降ずっと避けていたが、この曲たちにも向き合わなければいけないだろう。
プレイリストを開いて『ロゼリア』に分類されている曲目を見る。
カバー曲とオリジナル曲がいくつも並んでいて、そのうちの1つに目がとまった。
……Determination Symphony。
意訳すれば「決意の調べ」といったところか。
誰がどういう気持ちで誰に宛てて作った曲なのか、どういう意味を持つ曲なのかは知らない。いや、この場合は思い出せない、か。
だが今の私にはふさわしい曲名だと思った。
決意の調べ。
そうだ。私は向き合うんだ。日菜とも、忘れた過去とも、忘れてしまった人たちとも。そう決意したんだ。
ただこの曲はまだ弾けないし聞くこともしない。これは「ロゼリアの氷川紗夜」が聞いて、弾くべき曲だ。「記憶をなくした氷川紗夜」には少しもったいない代物に思えた。
何を演奏するのがいいだろうか。この曲がいいだろうか。あの曲がいいだろうか。
怖気づく気持ちもまだもちろんあるが、同時に少しの楽しさも感じられた。
それはきっと私は1人ではないと知ったからだろう。
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