【バンドリ】氷川日菜「あまざらしなおねーちゃん」
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46:名無しNIPPER[sage]
2018/03/01(木) 09:07:36.80 ID:ueeqel/10
2月18日
心境の変化というものはあらゆるものに対する印象を変えるのだと思った。
いつか聞いた音楽もその時の気持ちによって受け取り方が変わるものだ。
いずれにしても立ち去らなければならない 彼女は傷つきすぎた
開かないカーテン 割れたカップ 流し台の腐乱したキャベツ
あのアーティストの、自虐家の少女を歌った曲だ。前に聞いた時はただ切ないという印象を抱いたが、今日、歌を聞きながら楽譜に起こしていると、なんて優しい歌なんだろうかという印象を抱いた。
いつものように日菜が部屋にやってきたのは、その作業中だった。
ただ、その日は少し様子が違った。日菜は私に会わせたい人がいると言ったのだ。
その言葉に私は戦慄した。
嫌だ。
またきっと私は否定される。
ただただそれが怖かった。
……だが、私が危惧した恐怖はやってこなかった。
日菜が部屋に招き入れたのは羽沢つぐみという少女だった。
彼女は私に対して、「初めまして」と言った。
最初は解せなかった。何を言っているんだ。あなたは私の知らない私を知っているんだろう。初めましてなんかじゃないはずだ。
…………
少し考えてから、それが『私』に言われた言葉なんだと気付いた。気付いてから、不思議な気持ちになった。
やっと私は誰かに見つけられたんだ、という安心
もしかしたら裏切られるかもしれない、という不安
彼女も私ではない私に会いたくて初めましてなんて言ったのかもしれない。結局のところ私はやっぱり必要とされていないのかもしれない。でも私を私と認めてくれたことが嬉しい。
正反対のものが胸の中でない交ぜになった。羽沢つぐみに対してどういう反応をしたらいいのか分からなかった。
そうして黙り込む私に対し、羽沢つぐみは何度も声をかけてくれた。
しかし結局私は自分の名前を名乗ることしか出来なかった。
それでも彼女はめげなかった。その姿が眩しかった。
どうして私に対して、こんな面倒な事情を抱えた人間に対して、そこまで親身になれるのだろうか。考えても考えても分からなかった。
ただ、ほんの少しだけ、暗がりに光が射したような気がした。
それは風前の灯火のように頼りなく、どちらが前かも分からない暗闇を晴らすには弱すぎる光だ。それでも、それだけあれば少しは足を動かしてみようかと思えなくはない。
……私はどうしたいのだろうか。
楽譜に書き起こした歌詞を見て思う。
あの人が愛した 父さんが愛した
この海になれたら 抱きしめてくれるかな
今でもずっと愛してる
明日の私はこれにどういった気持ちを抱くのだろうか。
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