60: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/09(金) 06:00:23.93 ID:78N2qSGMo
そも、全ては海美が施したマッサージ。
その荒々しい揉み手によって、腰の炎症が活性化したのが敗因と言って差し支えない。
やはりやせ我慢に魅入られた男である。顔は笑って腰で泣く。
痛みを堪えて紡いだ「気持ちいい」は少女の笑顔を引き出したが、
その腰は悪化の一途を辿り巡って流れ着いた先は泥犂。
戦う前から負けていた。もはや若くして介護を必要とするその身である。
ベッドに戻れば通信機(スマホ)だってありはするが、事ここに至っては進むも地獄退くも地獄。
ああ、薄れゆく意識の中、海美と交わした会話が蘇る。
「見て、留守にしてますの張り紙だよ! コレを玄関に貼っておけば、
私がいない間に誰かが来ても無理に呼び出したりはしないはずっ♪」
そう言って、書き上げたばかりのペラ紙を掲げる彼女の顔は自信に満ちていた。
満面の笑み、してやったりの笑み、上手いこと言ったつもりの笑みでもある。
なるほど確かに言う通り、スケッチブックから破り取られたその紙には
クレヨンを使って"留守です"とデカデカ書いてある。
この清々しいまでのお知らせを、その目にしてなお誰がチャイムなど押すだろうか?
実に理に適っている作戦だ。提示した海美にとっても目から鱗のと言った所。
だがP氏は半魚人でもなく、落とすべき鱗も持っていない。
89Res/78.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20