61: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/09(金) 06:01:43.14 ID:78N2qSGMo
「……海美、君ってやつは本当に――」
「ナイスアイディアでしょ? ふふっ、偉い?」
「大バカ者、こんな物で人が化かされるか」
褒められたがりにピシャリ一喝。
P氏は用済みとばかりに放り出されたスケッチブックを手に取ると。
「まず筆跡が乙女乙女し過ぎている。次にいつまで留守かも抜けている。
こういう物は数日家を空けておくと書けば真実味だってグッと増す!」
などと上から目線でのたまって、たちまちのうちに見本を書き上げ渡したのだ。
正に救い用の無い阿呆である。
先の見えない馬鹿でもある。
この張り紙が仕事をしたせいで、時が過ぎた今美奈子たちは引き上げ己は這いずり待つのは天の助けばかり。
もはやふて寝すらできない孤独なP氏。……それからどれほど経っただろう?
いまだに彼はまんじりともせず冷たい廊下に伏せていた。
こうなってしまってはもう物を考えるのも億劫で、腰の痛まぬように背(せな)を丸め、
四肢を投げ出し転がる様は嵐の後、浜辺に打ち上げられたクラゲとさして変わらない。
沖から波がよせぬ限り決して海には戻れぬのだ。
そう、海。母なる海。人は、命は、生命は、いつしかその穏やかな自然の揺りかごに還るもの……。
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