59: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/09(金) 05:59:02.69 ID:78N2qSGMo
「ダメだ、行くな、待ってくれ!」
そう願うだけで時間を止めてしまえると言うのならば、世界はもっと平和であり、
人はバスや電車に乗り遅れる悲劇を二度とは繰り返さぬだろう。
時を支配する超能力。誰もが欲するそのパワー。
だが実際のところは現実味にやや欠けている。
事実、P氏が伸ばしたその右手は、思わず漏らした呟きは、
彼の周囲にたゆたう時間の流れを止めてしまうなどできなかった。
とはいえ、後一息の所までは来ていたのだ。
チャイムが鳴り、ベッドから降り、ままならぬ体は這って進んだよ玄関へ。
その地で新聞受けの隙間より、そよ風が耳に運んだ嬉しいニュースの一報は。
「この声、美奈子と奈緒じゃないか!」
佐竹が来た! 美奈子が来たっ!! ついでに奈緒もいるようだが、
この時のP氏の気持ちは劣勢の戦況に援軍を迎えた兵卒の如く躍っていた。
しかしながら現実は彼に非情でもある。
満を持して登場した佐竹・横山飛行隊はP氏の頭上を素通りし、颯爽と現れ出でた鉄の鳥は、
無情にもそのシルエットを徐々に彼方へと遠ざけ明後日の空へと飛んで行く。
待ってくれ! 友軍はココだ! どうか見捨てて行かないで!!
……けれども声は届くことなく、腰痛が起こす爆音で彼の願いは掻き消された。
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