45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/06(火) 00:15:50.39 ID:AWCgvPWLo
「えへへ〜。それじゃあ他のことも私がやったげるから、プロデューサーはゆっくり横になって休んでてね!」
そう言って彼女は立ち上がり、P氏は急速に青ざめた。
なぜなら現在時刻は午後六時。
海美がこの家を訪れてかれこれ三十分は経過している。
既に日も傾き、これからは年頃の娘なら自宅に帰っているのが相応しい時間となるだろう。
そんなP氏にとっては「もう六時」、だが海美にとっては「まだ六時」。
「ま、待つんだ海美。そろそろ時間も遅くなる、家に帰らなくちゃ……。
一応謝罪も聞いたのだし、俺の方なら十分助けてもらったから」
「でもプロデューサー家事もできないんでしょ?
お腹も空いて来る頃だし、ご飯ぐらいは代わりに作らせてっ☆」
「しかし海美! 君の料理の腕前は――」
「大丈夫大丈夫まーかせて! これも乗り込んだ船ってやつだし、ねっ!」
生憎と乗せた覚えは無いのだけれど――P氏が反論する間もなく船は港を離れていき、
密航者海美は勝手知ったる家の中を改めてぐるりと見回した。
実のところ、海美が氏の自宅にお邪魔するのは今回が初めてではない。
と、言うよりもP氏の所には普段から、
「仕事についての相談がある」といった名目でちょくちょくとアイドル達が顔を見せた。
また、訪れる者の中にはここぞとばかりに日頃のお世話の恩返し、
P氏の役に立ちたいと情熱を燃やす娘もいる。
「お部屋、少し荒れてますね。手伝いますから片付けましょう」
「普段は出来合いばかりですか? ダメですよ、ご飯は出来立てを沢山食べなくっちゃ!」
「よし、今日の飲み屋はココに決定! 愚痴ならお姉さんにトコトン吐き出しなさい♪」
そうしてあれよあれよと流されるまま、氏の自宅は事務所にとっての寄合所のような存在に。
今ではアイドル達の私物も増え、食器棚にはそれぞれが使う専用のコップまで置かれているという始末だった。
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