18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/03/01(木) 21:03:06.09 ID:1Dz8wOupo
この場合意識を失ったのはもちろん我らがP氏であり、手助けすべきは居合わせた海美の役目だった。
尊い命の輝きが、蝋燭に揺れるともし火が、P氏が意識を失う外的要因となった少女のその手に握られる。
彼が三途参りをしている頃、海美は一人P氏の体を揺すり、叩き、声をかけ抱き着き心音を聞いた後に呼吸の有無を確認した。
「……息、してない!」
海美は青ざめながら呟いたが、真実を語ればこれは真っ赤な嘘になる。
息を吸い、吐き、吸い、吐き、例え意識は失えど、生命活動を維持する為に氏は規則的な呼吸を続けていた。
にも関わらず海美は己を謀った。なぜか? 答えは人工呼吸をするためだ。
……ここで甚だ唐突と思われるが、読者諸氏の理解を深めるためにも正しい人工呼吸の手順を今一度おさらいするとしよう。
まず初めに意識不明となった病人を用意してもらいたい。
人数は一人で十分だが、寂しければもう一人分余計に準備して頂いても結構だ。
次に病人をなるべく床のような広いスペースに寝かせると、声かけ等を行い反応の有無を確かめる作業があるが省略。
相手の呼吸の有無には関係なく「人工呼吸が必要だ!」とアナタが判断したならば素早く決意を固めよう。
無事に気道の確保が完了すれば、晴れて人工呼吸の出番である。
だが待った。焦りは禁物。
ここで気をつけないといけないのは、仮にアナタがこれまでの人生において異性との接触機会が極めて少ない人であろうとも、
自分と相手の身分の違いが世間的に著しく離れた立場でも、三親等が相手でも、アイドルとプロデューサーという関係であったとしても
「人命救助はなにより優先される事柄である!」という大義名分を振りかざすことを忘れてしまっては問題だ。
これは人工呼吸という健全な救助活動の流れにおいて決して無視できない要素、
すなわち男女がそのやわやわとした唇同士を重ねる瞬間だけを切り取っては
「不衛生だ」「動機が不純」「医療に対する冒涜だ」などと見当違いな反論を声高らかに主張する輩がこの世に蔓延るためなのだが、
今、改めて講習を受けている読者諸氏の中には人工呼吸を単なるお破廉恥行為であるなどと
認識している者が誰一人としていないハズだろうとこちらは自負して締めくくる。
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