15:名無しNIPPER[saga]
2018/02/19(月) 02:23:41.44 ID:PL9Xl9Ik0
結局、お腹は空いてないと思っていたのにケーキもコーヒーもぺろっと胃袋に収まってしまった。
やばいな、今日は帰ったら走ろう。
タイミングを見て、ユイちゃんが再び席に近づいてきた。
「お皿とカップ、お下げしてもよろしいですか?」
「あ、お願いします」
「この後、何かされるんですか? ご予定は?」
「うーん、古本屋に行って漫画漁ろうかなって。さっきの漫画読んでたら、他も読みたくなっちゃって」
そう言うと、「もう読んだんですか?」って驚かれちゃった。
本読むの、早いんだよね、俺。速読が得意って言ったら聞こえはいいけど、要は流し読みってことなんだけど。
おかげで受験の国語と英語は時間に困ることはなかったね。
「ああ、うん。読んじゃったから……あ、そうだ」
向かいの椅子に置いてたリュックに手を伸ばし、漫画を取り出す。
「良かったら、あげるよ」
「えっ、本当ですか? でも、頂くなんてそんな、悪いです」
何ていい子なんだ。やっぱり天使、ユイちゃん、俺が死んだらお迎えに来るのは君であってほしい。
「それじゃ、貸すことにするから。次に会うときに返してくれたらいいから」
要するに、また来るねってことなんだけど。こうやって沼にハマっていくんだろうな。カモが一匹。
「はい! ありがとうございます! その時は、私のお勧めもおお貸ししますね」
「良いの? ありがとう!」
そこから彼女は、俺がどんな漫画を好きなのか、何で少女漫画を読むのかなどを一通り聞いてから、いくつか候補をあげてくれた。
「あ、それは読んだことない」
「めっちゃ面白いんですよ! じゃあ、ロッカーに置いときますね! いつお帰りになってもお渡しできるように!」
興奮気味に、少し言葉も砕けてそう言ってくれた。いやもう、気持ちだけで嬉しいよ、ぼかぁね。
「それじゃ、お会計お願いしても良いですか?」
話が尽きなくなりそうだから、楽しいけどそろそろ帰ることにしようと思う。お客さんも増えてきたっぽいしね。
料金も……普通にカフェでお茶したくらいの金額だった。たぶん、女子大生の大半が好きなおしゃれコーヒーチェーンでケーキとコーヒー飲むのと一緒くらい。
良心的な価格設定とコスパに驚きながら、それでこんなに可愛い子たちが接客してくれるんなら繁盛するよなぁなんて。
コートに袖を通し、入口に向かうとミヤビさんも近づいてきた。
「またのお帰り、お待ちしております」
さっきも浮かべてた、少し意地悪そうな笑顔だ。この人、そういう表情が本当によく似合う。
それとは対照的に、ユイちゃんはというと。天使のような笑顔「また絶対来てくださいね! 漫画楽しみです!」って言ってくれるもんだから、もう絶対くるしかないなこれ。
ぺこって頭を下げながら背中を向けると、二次元でしか聞いたことのない言葉が聞こえてきた。
「「いってらっしゃいませ、ご主人様」」
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