【安価】京太郎「派遣執事見習い高校生?」いちご「その45じゃ」【咲-Saki-】
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256: ◆t2KkLw8Fc7QA[saga]
2019/03/03(日) 19:01:51.32 ID:C92gNRTN0

 春の手に力がこもったことで、京太郎は察することができた。
 ここからは彼――子供についての話はできないこと。
 会話をするなら、他愛のない話に限るということ。

京太郎「ゆ――夕食、手をかけないとな」

春「うん。お魚屋さんに寄る?」

京太郎「いや、俺が捌くよ。タコは時間がかかるだろうから、明日に回すけどな」

春「じゃあスズキとサヨリ」

京太郎「ああ。あとはキスだな」

春「キス」

京太郎「スズキは香草焼きにしよう。で、サヨリでお吸い物と刺身――炊き込みご飯もいいかな」

春「キス」

京太郎「キスは天ぷらかな、やっぱり」

?「キス」

京太郎「あとは唐揚げなんかも――え」

春「京太郎――」

?「キス、しないの?」

京太郎「しねぇよ! あ――」

?「…………」クスクスクスクス

春「京太郎、逃げて!」

 ドクンッ――と鼓動が跳ねる。
 そのとき聞こえた声は、京太郎のすぐ耳元だった。
 振り返らずにはいられない位置と距離、そこにやった視線に移り込む、少年の真っ赤に裂けた口――。

春「京――」

京太郎「春、離れるな!」

 強く手を握り締めた瞬間、京太郎のチャクラが二人を包み、その身体を移動させようとする。

 傍目には一瞬のワープと見える術式だ。
 実際に、時間も経過することはない。
 けれど術者にとっては、異空間のようなトンネルを経て、別の場所へ向かうような移動方法である。

 その空間に他者を伴うのは初めてのこと、どんな異常が起きるかはわからない。
 けれど――。

京太郎(あれの気配はついてきてない……なら、なんとか……家まで、帰れれば――)

 これなら逃げ切れる、であればやるしかない。
 その一心で京太郎はチャクラを練り、自分と春を自宅へと飛ばす。

京太郎(っ……ぅっ、おぉ……これは、きつ……いっ……)

 チャクラの消耗は二倍どころではなく、秒単位で数十倍もの量が削られていた。
 視界が眩み、霞み、意識が遠のきかけるのを必死に繋ぎ止め、京太郎は転移先を目指す。

 ここで意識を失えば術は途切れ、二人はあの場所へ取り残される。
 あのおぞましい人外のいた場所で、無責任に気絶し、春を一人にしてしまうことになる――。

 そのことへの恐怖が京太郎の意識を繋ぎ止め、暗がりを抜けさせ、見慣れた光景へと誘っていた。

京太郎「――がっっ! はぁっ、はぁっ……やった、か……?」

春「あ……えっ!? なんで、家に……きょ、京太郎……?」

 春の戸惑った声が、心に安堵を与えてくれる。
 狭まり霞んだ視界に映るのは、いつしか見慣れていた門構え、古いながらも立派な和風建築。

 なんとか無事に、彼女を連れ帰ることができたようだ。
 そのことに胸を撫で下ろしつつ、京太郎は足を進めようとし――。

京太郎「ぁ――ぅ……」

春「京太郎っっ!!」

 敷地の砂利石を踏みしめたところで、京太郎の意識はプツリと、電源を切られたように途絶えた。



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