6: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2018/02/09(金) 23:49:42.02 ID:DwZz2Xwp0
果南「……そう、思ってたんだけどなぁ」
弁天島の社の前に腰を降ろして、ひとりごちる。
鞠莉が居ない誕生日なんて、何年振りだろうか。
小学生のときに転校してきたから、どんなにざっくり計算しても5年くらい前からは、誕生日には大体鞠莉が近くに居た。
時には鞠莉が家を抜け出して、実はホテルの方では大騒ぎだった、なんてこともあったっけ。
果南「……今考えてみると、鞠莉の部屋でパーティしてたのは脱走防止の為だったのかな」
──まあ、もはやそんな心配もいらないだろうけど。
決して社交的な性格とは言えないけど……主張が強い性格だし、留学先でもなんだかんだ元気にやっている……と思う。
誕生日だからかな。鞠莉とのエピソードばかり思い出してしまう。
果南「……私、寂しいのかな」
独り言には誰も答えてくれず、冬の空に溶けて消えていく。
果南「……私に寂しがる権利なんてないか」
だから、自分で答える。
半ば無理やり鞠莉の背中を押して留学させたのだ。
いろんなものを諦めて、終わりにして。
鞠莉と最後に交わした言葉はなんだったっけ……。
果南『──しつこい、もう何言われてもスクールアイドルはやらないから』
たぶんこんな感じだったと思う。
果南「……しょうがないよね」
だって、鞠莉は平気で自分の可能性を犠牲にしてしまう。
私みたいに思いつきで、頭空っぽで、とりあえずやってみればいいや、みたいな無責任な思いつきに対しても、平気で自分を犠牲にしてしまう。
だから、突き放したんだ。
果南「鞠莉は……もっと、高いところに居る人だから……」
急に風が吹き付けて、私の独り言は再び冬空へと攫われて消えていった。
* * *
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