追われてます!'
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74:名無しNIPPER[saga]
2018/04/06(金) 18:18:18.77 ID:LZXIfz580

「少なくともあの人は、相手によって対応を変えてる。
 俺の目線と東雲さんの目線は違う──だから、軽率なことは何も言えない」

「……けど、そんなの」

 当たり前のことじゃないの、とは言えなかった。
 相手の感情を感じ取るためのサンプルが私の場合少なすぎる。
 それに、ケーススタディだと言うなら、私はそもそもの前提から欠けてしまっている。

 私が続きを発することなく黙っていると、彼はそれまでの硬い表情を崩して、別の言葉を呟いた。

「……あんまりさ、早とちりすることでもないと思うよ」

「どういう意味?」

「内に向けた言葉か外に向けた言葉かなんて、当人以外には分かりっこないって話」

 そう言って彼は再び歩き始めた。何のことを言っているのかが分からなくて、様子を窺おうと後に続く。
 二階から三階へと上がりきるタイミングで隣に並ぶと、その先の一段に足をかけた彼は、また何かを思い出したのか「あ」と呟きこちらに目を向けた。

「ひとつ、質問していい?」

「う、うん。……どうしたの?」




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