68: ◆9Vso2A/y6Q[saga]
2018/04/06(金) 18:11:48.57 ID:LZXIfz580
「すごい、なんていうか、夕方からずっと集中して描いてたみたいだったから」
「……そう?」
「あ、違った?」
「んー……」
そうなのかな、と考えてみる。
集中はしていたといえばしていた。
が、あれくらいは普通というか……。いつも一人で描いていたから自ずと周りは静かで、集中せざるを得なかったというか。
たしかに部長さんのように集中とはかけ離れている人と比べれば、そう見えてしまっても仕方がないかもしれないが、
そのときの気分で一枚の絵の中でムラが出るのは嫌だと思ってしまうから、どのみち描き終えるまではそれを切らさないように努めようとはしていた。ほぼ無意識に。
だからどう言うのが正解なのか逡巡しつつ、
「描けるうちに描いとかなきゃなって」
と返事をする。嘘ではない。
「未来くんだって描くときは集中してるように見えるよ」
続けると、彼は「そうかな?」とうなじのあたりをくしくしと掻いた。
意地悪な返しだったけど誰だってそういう反応になるよね、と思う。
「萩花先輩がかなり怖くて」
「ふうん。あの人怖いんだ」
「まあそれなりにね」
でもそんなに怖くはないよ、というニュアンスで言って、彼は自分の飲み物に口をつける。
遅れて私も「ありがとう」と言ってからプルタブを上げる。
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