5:名無しNIPPER[saga]
2018/02/08(木) 14:42:05.78 ID:NWn4bXkJ0
「一枚にかける時間は?」
「えっと、三から四のつもりです」
「それは、どういう見積もり?」
本当にできるの? と問うかのような難しい顔をされる。
一瞬息の詰まる感覚を覚えたが、それでもここで黙ってはいけないと、何とか言葉を捻り出す。
「集中しているときは、昔はそれぐらいで描けていたので、描き込みにこだわりすぎないなら、それぐらいでできるのかなって」
今は、とは言いたくなかった。
腕とかそういうことを言い出すなら、能力全般落ちていることは自明で、昔通りに描けるはずがない。
思い入れとともに完成するまでの時間が伸びていたことも、本来私が遅筆なことも、すぐに描き直したいと思ってしまうだろうことも、自分の弱いところは全てわかっていて、それでも、
「……頑張ります。頑張りたいです」
これは気持ちの問題のはずだから。私次第でどうにでもなるはずだから。
そこに不安や迷いが生じたとしても、描けないことに比べればはるかにマシで、きっと受け入れられるから。
いつからか苛まれていた、どこまでも沈んでいく感覚を断ち切るために、数秒前に考えたことをすぐさま否定する。
「描けると思うんです。今の私は……欲しかった理由を、あなたにもらえたから」
ただ描くことが好きだから、と胸を張って言えるように、
理由がなくても描けるようになるための、仮置きの理由。
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