42:名無しNIPPER[saga]
2018/02/25(日) 02:50:08.01 ID:XJms5aKo0
でも、実際目の当たりにしてみると、身勝手に泣いているとは思えなかった。
佑希はいつも誤魔化したり言い繕ったりはするけれど、表情は一度も嘘をつけていなかった。
それに、俺が、俺を含めた他人が遠因となっているのは確かで、
目の前で妹が泣いていて、そのままにできるわけがなかった。
手を伸ばして、彼女の頭に触れる。
結局俺は、それがどんなに利己的な行為だと知っていても、困っている人がいたらなんとかしてあげたいと思ってしまう。
奈雨に顔向けできないな、と思う。
言いたいことは何一つ言えていない。確認しようとしたことも確認できていない。
彼女のペースで、されるがままの状態が続いていく──そう思っていた。
佑希は唐突に俺の手を払った。そして赤くなった目元を拭って、少し悲しそうに笑う。
「こういうとこ……だよね」
何かを覚悟するように、あるいは荒くなった呼吸を整えるように、彼女は腿の辺りを見て小さく息を吐く。
「おにいは優しいから、こういうふうに甘えたくなって、困らせちゃうんだよね」
「……」
「……あたし、酷いこと、たくさんしてるよね」
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