21:名無しNIPPER[saga]
2018/02/17(土) 18:10:16.58 ID:rPbMqZ0L0
【食紛争】
鍋たって材料は決まっているようなものだしさっさと済ませよう、と考えてはいたのだが、スーパーを出て時刻を確認すると二十時をとっくに過ぎてしまっていた。
まあ、俺と奈雨は何も悪くない。まっすぐここまで来てまっすぐ帰ろうとしている。
悪いのは忠告をしてきたはずの二人。
ここに到着したまではよかったんだ。
一般家庭の買い物のピークはとうに過ぎている店内で、ほどほどに安くなった野菜と肉を適当に見繕っていたところで、スマホが振動した。
『大きい飲み物何本かよろしく』
と、胡依先輩がイラスト部のグループラインに。
ほとんど買いたいものはカゴに入れていたから、ナイスタイミング、とかそういうことを考えた。ちょうど連絡を入れようと思っていたんだ。
スープを何にするか、つまり何鍋にするかについて意見を仰ぎたかった。
『わかりました。そんで、何味にしますか?』
これが間違いだった。俺と奈雨の会話の中では、オーソドックスに水炊きが食べたいなという話になっていた。
だからわざわざ訊かずして、何食わぬ顔で買って帰るべきだった。
『トマトチーズ鍋』とソラ。
『もつ鍋』と胡依先輩。
『何でもいいです。』と東雲さん。
意見が割れた。東雲さんはどうでもよさそう。そんな感じがする。
『それかキムチ鍋』と追撃。
『豆乳も捨てがたい』とこちらも。
数分の沈黙の後、
『いま、少し揉めてる。』と。
これが紛争……食の好みの違いを舐めていた。
それから四十分近く、俺たち二人は待ちぼうけを食わされてしまった。
幼稚園児のじゃれあいみたいだったと、東雲さんが後から教えてくれた。
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