199:名無しNIPPER[saga]
2018/06/29(金) 01:46:22.56 ID:CaJ2VfCb0
翌日の夕暮れ、「わたし」が庭に向かうと、エリはもう既に井戸の縁に座っていた。
いつもなら手にしているはずの本も何も持っていなく、「わたし」の姿を捉えた時にやっと表情に温度が戻った。
「ねえ、落ちても死ななかったらどうしよっか?」
「……そのときはそのときじゃないですかね」
「……ふふっ、そうかもね」
二人が揃ってしまったのだからもう不必要な言葉は交わさないのではないかと、「わたし」がエリの手を取った時には考えたが、
彼女たちの双方が、死を恐れるように──別れを惜しむように、顔を俯かせる。
「アタシはわかんないけどさ、あなたはきっと生きてるよ」
「……そう、ですか」
「……そんなしみったれた声出さないの。アタシだって、できるならこのままでいたかった」
「……」
「あなたにだっていたでしょう? アタシみたいな存在が。ほんの少し前までは」
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