9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/08(木) 08:02:48.81 ID:9Wp9vh8Yo
「いや、でも、あの子はだいぶ逸材だよ? 声に強い力もあるし、ルックスだって申し分ない」
「それでもダンスの成績がすこぶる悪い。これなら、同じ条件でももう少し踊れる別の子の方が――」
「うぅ、だけど律子ぉ……」
「情けない声上げたってダメなものはダメですってば。大体プロデューサーがこの子を推す理由も、
彼女が言ってた母子家庭だっていうのが引っかかった部分が大きいでしょ」
図星だ。それが全てというワケじゃないが、14歳で家庭を助けるために仕事をしたいと言った
彼女の動機が俺の心を強く揺さぶったのは事実だった。
思わず視線を逸らせると、今度は千早と目と目があう。
「……なにか?」
「違う、違うんだ! 俺は決して哀れむだとかそんなつもりは――」
言い訳する俺に千早がやれやれといったため息をつく。
「分かってます。それだけの理由でアナタが簡単に合格を出したりしないことは」
すると、律子が問いかけた。
「でも千早。プロデューサーの採用基準は甘々よ」
「だったら、私が少し付け加えるわ。彼女――北沢志保には強いハングリー精神があると思うの」
「まぁそれは……。目力は半端じゃなかったし、やる気も人一倍感じられたわね」
「そうだろうそうだろう? 千早、もっと言ってやってくれ!」
「律子を説得したいのなら、プロデューサーは黙っててください」
ピシャリと千早に言い切られ、俺はお喋りなお口のチャックをしめた。
……と、同時に部屋の扉がノックされる。
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