33: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/09(金) 00:03:20.77 ID:Ui02l9zqo
「……でさ、琴葉は?」
尋ねた恵美の目が言ってる、「この琴葉だもん。当然受かってるよね? ね?」と。
そうして自身の名前が出た途端、恵美の後ろに隠れていた少女は気の毒なほど飛び上がった。
その顔からは既に血の気が引いていて、世界中の悲痛を一身に集めたかのような様に見える。
「た、田中さんは……その」
それでも俺は、彼女の合否に関してどうしても言葉を濁すしかないワケで。
「い、いいんです! ……それ以上は、言わなくったって分かります」
だけどよほど察しの悪い人間でもなければすぐに結果は分かるワケで。
「……だけど、みんなにはちゃんと謝らなくちゃ」
してまた、彼女が見せた一瞬の違和感。……今度は見過ごしたりしない。
寂しさと、それから責任感に押しつぶされそうになってる弱気な少女の横顔をだ。
「あ……。田中さん、一つ聞いてもいいかい?」
「は、はい?」
「面接の時は聞けなかった。君がオーディションを受けたのは、みんなに応援されたからなのかを」
「……えっ?」
彼女にとって、まるで予期していなかった質問をぶつけられたのだろう。
田中さんは大きくその目を見開くと、すぐに動揺を隠すように顔を伏せて。
「い、いえ。私が今日のオーディションを受けたのは、合格するため……」
言って、彼女は口ごもる。
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