31: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/09(金) 00:00:40.56 ID:Ui02l9zqo
だがこの時、今までジッと黙っていた最上静香が立ち上がった。
「あの、お喋りするだけなら先に私の用事を済ませてもらってもいいですか? 私には時間がないんです」
その声と表情には少しの苛立ちが見て取れた。
彼女はチラリと田中さんを見ると、そのまま視線を俺の方へと移動させ。
「書類、揃えてきましたから。今度はキチンと父も説得して――中学を卒業するまでなら、と」
学生鞄から書類の入ったファイルを取り出し俺に向かって差し出してくる。
「これ、正真正銘父の文字です。いつかの偽物じゃないですから、
今ココで家に電話するなりなんなりして確認してもらったってかまいません」
途端、俺は彼女の言う"いつか"の光景を思い出した。
呼び出されて向かった重苦しい最上家の食卓。
迂闊に口を挟んだせいで壮絶な親子喧嘩が勃発してしまったあの日のこと……。
「いや、うん。だけど、それには及ばないかな……。君のお父さんから書類のことは聞いてるから」
「……はぁ?」
しまった、これが迂闊な一言だ。……少女の眼光がみるみるその鋭さを増し、
俺はまるで針のむしろに座らされてるかのような居心地の悪さに包まれる。
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