30: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/08(木) 23:59:17.62 ID:eKF+OPoOo
そう言って、自信なさげな表情で恵美を見つめる田中さん。
それは彼女の面接時、俺が一瞬だけ見ることのできた不安げな表情とピッタリ一致して――
この瞬間、俺はうっかり見過ごしていた大きな違和感を思い出したんだ。律子の言ってた言葉が蘇る。
『今振り返って考えれば、これ以上ないほどの面接のお手本ってトコですかね』
……なんてこった。俺は馬鹿だ。よくよく考えてみるまでも無く、
もっと早い段階で彼女の不自然なまでの優等生っぷりに疑問を持つべきだったんだ。
と、同時に「アンタ、今さら気づいたワケ? そんなこと最初から分かりきってるじゃない」と
聞き慣れた小憎たらしい甘い声が脳裏に響いた気もするが。
だとすれば、ここで確かめなきゃマズい――面接で見た彼女の姿は
"面接者役"になり切った彼女だったんじゃ?――という疑問の真実をだ。
「……なら田中さんは、いわゆる完璧主義者ってやつなのかな?」
「えっ? ち、違います! 私、そんなに出来た人間じゃ……」
「んん? なら、君は結構だらしないの?」
「だ、だらしないかと言われれば……そう、なのかも。夜中にどうしても我慢が出来なくなって、
ベッドに寝ころんだままアイスを食べたりする夜が、たまに、あったりなかったり……うぅ」
そこまで答えて、恥ずかしいのか耳まで赤くなった田中さんを
恵美が自分の影へと移動させた。ちょうど俺から彼女を庇う形だ。
だけどこの反応が全てを裏付けた。
田中琴葉と言う少女は決してただの"優等生"では無かったと、それに――。
「はいはいストッププロデューサー。琴葉スッゴク困ってるじゃん!」
「わ、悪い。困らせるつもりは無かったんだが……」
「い、いいの恵美。アドリブに弱い私がいけないだけなんだし……」
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