22: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/02/08(木) 23:44:15.17 ID:eKF+OPoOo
「いけないことは無いんだけど、余りにソツが無さ過ぎる。
アイドルってのは、もっと何かしら強いフックを持ってなくちゃ」
すると俺の意見を引き継ぐように律子が千早にこう言った。
「例えばほら、千早は矢吹可奈ちゃんに惹かれたじゃない」
「ええ」
「アレ、千早は彼女のドコに惹かれたワケ?」
「それは……、もちろん歌よ。今はまだ未熟な彼女がキチンとした物になった時に、
あの弾けるような歌声がどんな風になるかが知りたくて」
「でしょ? ちなみに、私が北上さんを推した最大の理由は彼女の予測不可能さなの。
次に何をしでかすか分からない、ビックリ箱みたいな性格は見ている人を飽きさせない」
「……なら、プロデューサーも?」
「俺が北沢さんを選んだのはプロの匂いがしたからだよ。あの年でもう、
彼女は責任と責任感の違いを分かってるように見えたからね。
……おまけにおっかないほどの貪欲さは、どこの世界でも武器になる」
そうして俺は机の上の資料へと視線を落とし。
「だけど彼女――田中琴葉にはソレが見えない。いわゆる人に抱かせる"期待"がさ」
「人に抱かせる、期待……」
「そうよ、プロデューサー殿の言う通り。……おっちょこちょいなあの春香を間近で見て来た千早だったら理解できない?
アイドルっていうのはファンにとっての神様じゃない。自分自身を重ねながら、一緒に成長できる対象なの」
律子の言葉に頷くと、俺は残念な気持ちでこう続けた。
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