27:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:54:42.40 ID:kLIsZwOI0
「ろうそくろうそく、よし!後頼む!」
「一応みかんとか持って来たぜ」
「えぇ!?い、いいよ!ショートケーキにみかんは合わないって!」
「細かい事は気にすんな!あれだ、具材てんこ盛りの方が美味しいだろ?」
「いやぁ〜……まあ」
28:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:55:09.60 ID:kLIsZwOI0
「悪いな私の為に」
「えへへ」
「おう!金額だけま、多少はね……?」
「ま、何はともあれよ、あれだ、RI以外の3人で割り勘でいいじゃねぇかよ」
「おお、そうだそうだ、MZ、今年遅れて到着するらしいぜ」
29:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:55:46.16 ID:kLIsZwOI0
携帯の番号を口にしている。和気藹々と楽しそうだ。
胸が締め付けられた。この差はなんだ。
片や性交を強要され逃げ惑い、傷だらけになった猫。片や誕生パーティーで和気藹々と楽しげに話す家族。
自分も少し前まで向こう側だっただけに、余計辛かった。リビングのガラスが世界を隔てていた。
自分も温かく迎える家族たちがいた。しかし今やそれは叶わない。どこか遠くの世界に来たかのようだ。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:56:28.74 ID:kLIsZwOI0
「ワーッハ!」
「さっさと飲んで喰おうぜ?腹減ったぁー」
電話はいつの間にか終わったようだ。
目の前に映る家族と母親、姉のSNNN、自分が重なった。
31:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:56:55.94 ID:kLIsZwOI0
ハッと気が付いた。何を想像していたのだ。BNKRGは考えを取り払う。
猫なんて所詮なんの苦しみも持たない畜生だ。
そう考えた直後に群れのルールという言葉が出てきた。GOの群れと同じように、他にも猫には猫の社会があるのだと気づいた。
ならばその葛藤も持っているのかもしれない。いやあるに違いない。どうして彼らを笑えようか?
32:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:57:34.57 ID:kLIsZwOI0
自分が狩ってきた猫たちの顔を思い浮かべた。
思い出せる数は少なかった、が、彼らにも確かに大なり小なり多くもあり少なくもある家族がいたのかもしれない。今まで何も気づかなかった。無意識に一家を引き裂いていたのだ。
人殺しと一緒だ。それが人の命と猫の命であるかの違いがあるだけだ。
どうしてTVに出る逮捕された殺人犯を笑う事ができようか?
33:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:58:00.82 ID:kLIsZwOI0
「ん?」
一人がリビングの窓に近づく。
咄嗟に茂みに隠れた。窓が開かれる。
34:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:58:28.05 ID:kLIsZwOI0
BNKRGはその場を離れた。
居づらくなった。あのままパーティーに割って入って保護してもらってもさらに自分がみじめになるだけだ。
BNKRGを追っていた猫たちは何処にもいなかった。撤収したのかもしれない。
日はとうに暮れ、公園の明かりが街路樹を照らしていた。
35:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:59:03.46 ID:kLIsZwOI0
何故犬猫は食べてはいけないのだろうか。今更になってBNKRGは思った。
頭がいいから?いや、ブタもガチョウも犬より頭がいいという話を聞いたことがある。
菌が多くて食中毒になるから?なら貝類のカキはどうなる?毎年少なからず食中毒が起きている。
倫理的、道徳的な問題?倫理とは何?道徳とは何?
頭がこんがらがってきた。自分らしくない。くよくよ悩む性格ではないのに。
36:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 01:59:30.08 ID:kLIsZwOI0
疲れた。ついさっきまで走って止まり、走っては止まりの繰り返しだったので当たり前だろう。お腹も空いている。
ホカホカのご飯が食べたい。お風呂で汗を流したい。温かいベッドで寝たい。そう思っても飼い猫にならない限り出来るはずがない。
今までなんでもない、当たり前の事が素晴らしい事だった。
そうか、と心の内で手を鳴らす。食糧問題も野良猫には重要な悩みなのかと今更になって気づく。
BNKRGは疲れて公園の茂みに入った。今は腹よりも走り回った眠気の方が勝っている。ここなら、安易に見つかることもないだろう。
37:名無しNIPPER[saga]
2018/02/06(火) 02:00:06.61 ID:kLIsZwOI0
BNKRGは秋が嫌いだ。それは姉のRUがいなくなった季節でもあるからだ。
家族の姿が脳裏に映る。いなくなったRU、毎朝元気に出勤するSNNN、優しく、BNKRGを受け入れてくれるKNN。
会いたい。寒さが目に染みたのか、一度目をこすってため息をついた。
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