48:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:51:46.60 ID:vBuyWfgt0
理解り切っていたことだった。
長々と綴られた題目のような証明の、その結末は実に単純なもので。
ボクが定義するのを恐れていただけで、この感情は随分と昔から存在していたのだ。
ボクは彼と真に並び立つことを欲していたのだ。アイドルとプロデューサーという関係だけでなく、相棒として、パートナーとして。
退屈だったセカイに色を与えてくれた彼に、ボクが特別であると認めて欲しかったのだ。
49:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:52:23.39 ID:vBuyWfgt0
「えーーっと…………」
「優柔不断だね。相変わらずそこはキミの……」
返答に窮して唸っている彼をボクが咎めようとした時、部屋のドアがバタンと大きな音を立てて開き、誰かが飛び込んできた。
50:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:53:24.29 ID:vBuyWfgt0
「志希か……全くキミは、狙ったかのようなタイミングで……それでプロデューサー、これは?」
「そういえばまだちゃんと言っていなかったな。志希や蘭子たちにパーティの準備を進めてもらっていたんだよ……誕生日おめでとう、飛鳥。これからもよろしくな」
「……ありがとう、プロデューサー。忘れられているのかと思っていたよ」
51:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:53:52.76 ID:vBuyWfgt0
会場には響子や葵が指揮を執ったらしい料理の数々の中央に、立派なホールケーキが陣取っていた。
『ハッピーバースデー飛鳥(ちゃん)!』
大きな祝福の声とクラッカーに揉みくちゃにされながら、ボクは饗宴へ身を投じる。
52:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:54:20.55 ID:vBuyWfgt0
宴のあと、ボクは例によって事務所の屋上の特等席に佇んでいた。空には微かに雲がかかり星の光を遮っているが、それでも構わないと言うように白の絵の具をひと雫落としたような月が己の存在を主張している。
「フフッ、やれば出来るじゃないか」
天上の演出家も時には空気を読むらしい。そんな傲慢な批評家を気取りたくなるくらいには、この朧月夜は美しく見えた。
53:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:55:02.23 ID:vBuyWfgt0
「やっぱり此処にいたか」
うわ寒いな、と言いながら扉を開き寒空とボクの世界に入って来たのは、言うまでもなくプロデューサーだ。彼はまだ雪の残滓が僅かに残る凍り付いた屋上をしゃくしゃくと踏みしめながら、真っ直ぐにボクの隣へと並んだ。
「それで、どうしてキミは態々こんな所を訪ねてきたんだい」
54:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:55:40.05 ID:vBuyWfgt0
彼は珍しく照れ臭そうに頭を掻きながらはにかんだ。
「初心な中学生じゃあるまいに」
「笑うことないだろう」
55:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:56:37.26 ID:vBuyWfgt0
月日が流れて、変わったものと、変わらないもの。代わり得るものと、代わり得ぬもの。
ボク達は今日、またひとつ代え難い変化を手にした。
「……いつか飲めるようになったなら、もう一度コーヒーブレイクに誘ってくれ。勿論、まだ冷めていなかったなら、な」
56:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:57:08.01 ID:vBuyWfgt0
綻びそうになる頬をなんとか繋ぎ止めながら、ボクは真新しい蜂蜜色の月のペンダントを軽く握った。
「偶にはこんな夜も悪くないな」
「あぁ……月が、綺麗だ」
57:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:57:41.84 ID:vBuyWfgt0
今はまだ、甘い夢の中だけれど。
約束はいつだって、ボク達のすぐ隣に在る。
疲れた時には少しだけ立ち止まって、思い出のアルバムを眺めればいい。
58:名無しNIPPER[saga]
2018/02/03(土) 01:00:55.83 ID:vBuyWfgt0
以上です。以下は後記となります。
飛鳥、誕生日おめでとう
この一年間の生きる目的だった限定SSRも無事手に入りそして今日という日を迎えられたことで私は今年の目標の殆どが果たされてしまいました。
今回はかなり「プロデューサー」のキャラクターが濃くなっています。かなり迷いましたが、因果を繋げる上でどうしても必要だったので。
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