【モバマス】 塩見周子「なか卯には人生がある」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/28(日) 03:01:03.47 ID:nBRbhFMNO


周子(また、こんなこともあった――あたしが高校生になる直前のことだ)


周子(あれは確か休みの日。『何もすることがないなら店を手伝って』と母に言われたのでそうしていたら、『あんた、何かやりたいことはないの?』と聞かれた。恐らく高校生にもなるのに『これがやりたい』というやる気を見せないあたしのプータローぶりを見て、将来を危惧して言ったのだろう)


周子(そう言われて、改めてあたしは心の片隅で燻っていた存在を思い出した――そう、アイドルという存在だ)


周子(それから間もなく……。あたしは芸能関係の養成所に入った)


周子(養成所――歌手や俳優、アイドル、声優など様々な芸能人を輩出することを目的に設立された、大手芸能事務所が抱える養成所だった)


周子(大手なので、その校舎は全国規模で存在する。あたしの地元にもあったので、あたしはそこに通うことにしたのだ)


周子(父はそれについて怪訝な表情をしていたが、母は『やっと自分の口でやりたいことを言ってくれた』と応援してくれた)


周子(養成所での日々は楽しかった。ダンスや歌、それから演技のレッスンもあって、世界が広がった気がした)


周子(――だけど、楽しい日々は長く続かない)


周子(あたしはレッスンさえ楽しく通っていたけど……。やがてその現実を知ることになる)


周子(養成所には段階があった。例えば『基礎・応用・研修』というように。一年に一度行われる進級試験の結果と、それから普段のレッスンの成果で成績がつけられ、次年度の自分の段階・クラスが決まるという仕組みだ。研修クラスまで上がると、色々と本格的なレッスンが受けられて、芸能人・アイドルという道も半ば現実味を帯びてくる)


周子(そして、進級試験には系列の芸能事務所の偉い人も審査員として見に来る。もしそこで目に留まれば、一次審査から二次審査、そして三次審査と上へ上がり、全てパスできれば芸能事務所へ所属――といった道のりだ)


周子(つまりは進級することも大切だけど、最終的に系列の芸能事務所に所属することが研究生のゴールなわけで、研修クラスまで上がったら本格的なレッスンを受けられるものの、そのクラスに上がれたからといって必ず所属できるわけじゃない。だからみんな進級試験に全てを賭けている……)


周子(それであたしの場合は……。あたしは、スムーズに三年で研修クラスまで行くことはできたんだ。だけど、それまで一度も進級試験の一次審査さえ突破できなかった……)


周子(そこで、改めて残酷な現実を突きつけられたってわけ)


周子(思えば、あたしは部活感覚だったのかもしれない。だけど、周りの人たちには『アイドルになる』という確固たる意志があった)


周子(あたしにもその意志が全くなかったわけではない……。けれど、命を賭けているような周囲の人たちに『あたしも全てを賭けている』と主張できるか――そう聞かれると、快く『はい』と答えられる自信はあまりなかった)




店員「――コーヒー、おかわりはいかがですか?」


周子「あ……。お願いしまーす……」


周子(一旦、息継ぎのために追憶の海から顔を出す)


周子「ふぅ……」






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