【モバマス】 塩見周子「なか卯には人生がある」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2018/01/28(日) 02:58:32.22 ID:nBRbhFMNO
店員「お待たせしました。アメリカンです」
周子「ありがとうございます」
周子「……」
周子(曖昧……。そういえば、あたしって何でアイドルになったんだっけ?)
周子(始まりは、ほんの些細なきっかけだったと思う。ほんの些細な、人並みな理由)
周子(女の子が綺麗なものに憧れるのと同じ――そんな、人並みの理由)
周子(あんな存在になれたら、どんなことでもできるし、どんな場所へも行ける……。そう思ったから)
周子(――あたしは、伝統というものがあまり好きではなかった)
周子(伝統というものは、束縛という側面も持っている)
周子(それを受け継がなければならないという、個人の生き方を殺し全体を生かすという悲しい側面が)
周子(しかし、伝統がもたらす恩恵に憧れているあたしもいて……)
周子(自由で奔放な存在に憧れつつも、一方で伝統が持つ気高さも羨む……。そんな曖昧な自分が嫌いだった)
周子(あたしはそのジレンマの中で常に揺れていたのだ)
周子(例えば地元で、あの実家で暮らしていた過去のあたしがそう)
周子(ある時は、『お前は将来何になりたいんだ?』と父から聞かれたことがある)
周子(幼いあたしは父に手を引かれ松原通りを歩き、やがて松原橋でそんなことを聞かれた。幼子にその真意が分かるはずもなく、あたしは確か――)
あいどりゅっ!
周子(そんなことを言ったかもしれない。さながら弁慶と牛若丸のように――父という弁慶の先制攻撃を、あたしは牛若丸さながらヒラリとかわしてみせたのだ。きっと父は『お菓子屋さんになりたい』と言うあたしを期待していたのだろう。あたしの実家は昔から続く、由緒正しき京都の和菓子店なのだ)
周子(今思い返すと、『そうかそうか……』と川床を眺めていた父の眼差しはどこか寂しげだった)
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