97:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/04(日) 23:13:51.93 ID:gbrZvsqSo
「……ごめん、すぐにどくよ」
図らずも、蘭子の耳元で囁くような形になってしまった。
鼻孔をくすぐる、彼女の甘い匂いに不覚にも少しドキリとさせられてしまう。
目と鼻の先に、白く、細い首筋があるのだ。
ボクが夜のセカイに住まう吸血の一族だったら、危ない所だったよ、蘭子。
「んー」
蘭子が、仰向けの状態で顔をこちらに向けた。
相変わらず瞳に力は無く、頬は熟した果実のように紅い。
艶のある唇から漏れる熱い吐息は、ボクの理性を溶かそうとしているかのよう。
「……っ」
……なんて、何を考えているんだ、ボクは。
ボクと蘭子は、友情で結ばれている仲だ。
そんな彼女に対して、まるで劣情を催したかのような思考を巡らせるだなんて。
例えセカイが許したとしても、ボク自身がそれを許さない、許せるものか。
「んー?」
無邪気に微笑む彼女から逃げるように、ベッドに手をかけ体を離す。
いや、‘ように’と言ったけど、逃げたんだ。
でなければ、ボクらが体を離した時に開いた空間に入り込んだ空気に安心したりはしない。
ボクらを隔てるものが無いのならば、作ってしまえば良いのさ。
例えそれが、何の力も無い、ただの空気だとしても、そうと意識すれば――
「んー!」
なんて、そんなボクのちっぽけな思いは、黒き堕天使によって無に帰された。
離れない、離れたくないという思いの前では、空気は何の壁にもなりはしない。
ああ、そうか。
壁なんて、元々存在しなかったんだ。
https://www.youtube.com/watch?v=DOBTdxRuTn4
107Res/48.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20