関裕美「0点の笑顔をあなたに」
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32: ◆5AkoLefT7E[saga]
2018/01/13(土) 00:00:29.23 ID:TDi1TcfI0

「でもな、その試合の後から、そいつは全然振らなくなっちゃったんだよ。いっつも見逃し三振でさ。……ま、振って怒られるのが嫌だったんだろうな」

「ふうん……」

「もうちょっとだけ、野球の話、させてくれ。悪いけど」

ほんの少し、バツが悪そうに、プロデューサーさんさんは笑った。
きっと、何か私に伝えたいことがあるのかな。

「メジャーリーグってわかるか? アメリカの野球なんだけど」

私は無言で頷く。

「実はな、メジャーは日本の野球より三振が多いんだ。”アメリカ人は振り回すから”とか”日本人は当てるのが上手い”とか、色々言われてるんだけど俺はそうは思わない。向こうは、チャレンジを責めないんだ」

「チャレンジ……?」

「ああ。これは別に、野球に限ったことじゃない。サッカーだって、バスケだって、どんなスポーツだって。結果的に失敗したとしても、挑戦したことを褒めるんだ。でも、日本は違う。……なんてひとくくりにしたら怒られちゃうかもしれないけどな」

そう言って、プロデューサーさんはまた、笑った。

「俺はさ、そのバットを振れなくなってしまった友達を見てから、ずっと、ずっと思ってたんだ。絶対に、人の挑戦を笑ってやるものか! って。ヒットを打てなかった結果を見るんじゃなくて、ヒットを打とうとしたその思いを見ようって」

「人間はさ、何かに挑む時、その中に何か武器を持ってるんだ。”パワーがあるから振ろう””PKが得意だから蹴ろう”みたいにな。アイドルに例えるなら……”ダンスが得意だから踊る””歌が好きだから歌う”って感じか。……裕美はどうだ?」

「へっ? ええっと……」

突然のパスにびっくりして、おかしな返事をしちゃった。べ、別に話を聞いてなかったわけじゃないんだけど、全然、私に武器なんて……。

「あー、いきなりじゃビックリしちゃうよな。すまんすまん」

また笑いながら、プロデューサーさんは続ける。

「武器ってのは、なにも目に見えるモノやスキルだけじゃない。”これをしてやる!”っていう意志も大切な武器だ。本番前に話したよな? 裕美は今日、何がしたかった?」

「私は……」




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