33: ◆5AkoLefT7E[saga]
2018/01/13(土) 00:02:05.56 ID:TDi1TcfI0
目を閉じて。本番前を思い出す。
プロデューサーさんは、舞台に向かう私にこう言った。
『裕美は今日、何がしたい?』
その言葉に返答はできなかった。プロデューサーさんは多分、私がミスするのを勘付いたのかもしれない。
それでも、私に、目的だけは渡してくれた。そして、舞台までの短い間で、ほんの少しだけど、見つけた。
私は踊りが上手いわけじゃない。歌も普通だ。そのうえ笑顔も全然できない。そもそも見た目だって……。
練習はたくさんやったけど、それでも本番前はとっても不安だった。
満足なパフォーマンスができるかどうか、自信なんて、全くなくって。
でも、そんな私だって。
せっかく見てくれる人がいるんだから。
「お客さんの……目を、いっぱい見ようと……思った」
「どうだった?」
「失敗しちゃった時は……ちょっと不安そうな顔の人もいたけど……でも」
「でも?」
「みんな、笑ってた。……と思う」
「もっと強く言い切っていいのに」
「う……」
「でもまあ、そういうことだろ。確かに課題は多かったよ。だけど、裕美が1番やりたかったことができたんだから。これは成功だ」
「そう……なのかな」
「もちろん。何もしなかったんだったら怒るさ。でも、チャレンジしたんだろ? いいライブだったよ」
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