結城友奈「これは勇者たちの物語」
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6:名無しNIPPER[saga]
2018/01/12(金) 22:51:49.14 ID:QHT5/WDno

美森「……分かってもらえたと思います。世界は滅んでいるに等しく、偽りの小さな世界を守るためだけに私たちは戦い……これからも散華を繰り返していく。そんな救いのない物語の真っ只中に私たちは居るんです!」

友奈(もしかしたら私は、今の東郷さんに返せる言葉を持っていたのかもしれない。だけど、本来なら知るはずのない未来を知っているからこそ言える言葉であって、あまりにも無責任と卑怯が過ぎているように思った)

友奈(私は出かけた言葉を飲み込む。すると……。ふと、何故私がここに居るのか、その理由をまた思い出せなくなりかける。今も思い出している途中なのに! 必死に奥歯を噛みしめてこらえた。……何を決意して、ここに居るのかもう一度思い出すんだ! そして、自分の行うべきことを行え! 高嶋友奈!)

夏凜「そ、それでも……私たちは世界を守らなくちゃいけなくて──」

美森「夏凜ちゃん! あなたは大赦の道具にされていたのよ!? それでもまだ大赦のために戦うの!?」

夏凜「私が、大赦の、道具……?」サァー

風「……アタシも大赦には思うところがあるし、今も全然許せてない。だけどね! それでもアタシはこの世界を守るわ! だって、アタシたちの住む世界には樹や皆、東郷あんただって生きて生活していることに変わりはないのだから!」

美森「……っ……!」

美森「わ、私たちは生き地獄をこれからも味わい続けるんですよ! そんな生き方のどこに幸福なんてあるんですか!?」

樹「……」フルフル!

千景「そう、樹さんは東郷さんの考えを否定するのね……」

美森「樹ちゃん……。こんな目にあってまで何故、この世界を守ろうとするの……?」

友奈(皆が自分の意思を示していた。私は自分の知識を卑怯だからと言って、このまま黙っているの? ここに居る意味はそんなことのためなの? 高嶋友奈はそれで良いの? ……良いはずがない! 私は高嶋友奈だけど、間違いなくこの世界で二年間、結城友奈として生きてきたのだから! だから、私は思い出す、思い出した! 自分がここに居るその意味を! 私は──)



友奈(私は東郷さんの心を守るために! ここに居るんだっ!)



友奈「──東郷さん。私は皆と、東郷さんと暮らしているこの世界が、本当に好きなんだ。皆と過ごした勇者部が、その活動で出会ってきた人々が、友達が、クラスの皆が、近所の人が、お義父さんお義母さんが……みんなみんな、あたたかくて優しくて、こんな私を受けて入れてくれて……だから! だからね!  心の底から私は皆が大好きなの!」

友奈「私はこの世界を守りたい、ううん、守るよ。東郷さんが居る私たちの生きる世界を、私は守りたいんだ!!」

美森「どうして分かってくれないの、友奈ちゃん……? 戦い続ければ、大切な人との記憶さえ忘れてしまうのよ! どれだけの宝物であっても、幸福な思い出であっても全部、全部! 私たちは忘れてしまうのよっ! 私は忘れたくなかったはずなのに!!」

友奈「……っ……!」

友奈(心で強く決意していてもその言葉は痛かった。本当なら東郷さんにきちんと"違うよ"と返したかった。だけど、私は忘れることの怖さを多分誰よりも知ってしまっていて、今だってポロポロと記憶はこぼれてしまっている。一秒後には自分が高嶋友奈であることを忘れてしまうかもしれない。だから、東郷さんの気持ちが痛いほど分かってしまうから、私はどうしても言葉を作ることができない……。でも……東郷さん止めたいと思う気持ちは本当で……私は、私は……っ!)

ポン

友奈(いつの間にか隣まで来ていたぐんちゃんが、私の背中を優しく叩いてくれる。不思議と心が穏やかになり、頭の中が落ち着いていく。……きっと私はぐんちゃんに力を貰ったんだ)

千景「おそらくね、私と結城さんほど東郷さんの気持ちを分かる人は……そうね、後は三ノ輪さんくらいのものでしょうね。……そのことだけは覚えておいて欲しいものだわ」

美森「何を、言っているの……?」

友奈(東郷さんには答えず、ぐんちゃんは私にだけ聞こえる小さな声でささやいてくれた)

千景「高嶋さん、"こちらのこと"はお願いするわね。だから"あちらのこと"は私に任せておいて」

友奈(そして、ぐんちゃんは一瞬だけど、一緒に暮らしていた時の懐かしい、あのいつもの日常のように──)

千景「……」フッ

友奈(ささやかな笑顔で、確かに笑ってくれたんだ。──多分、私とぐんちゃんの歩いてきた道がもう一度交わった、そんな瞬間だった)






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