結城友奈「これは勇者たちの物語」
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10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/12(金) 23:36:38.07 ID:QHT5/WDno

銀「ってことで、アタシと千景さんがバーテックスを食い止めます。だから、皆は話し合って、一番良い結論をどうか出してください。アタシと千景さんだけ話し合いに参加しない理由は他にもあるんですが──今はこれで納得してもらえると助かります」

美森「銀っ! 何を言っているの!? そんなこと……いえ、そもそもあなたは変身すら出来ないのだから──」

銀「東郷さん、今度はアタシの一生に一度のお願いを聞いてもらう番ですよ? アタシがこれから行うことを見逃してください。──もう嫌だな、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。それにこれは、アタシたち、三ノ輪銀と鷲尾須美、乃木園子がもう一度未来を掴むために必要な、折角のチャンスになるんですから、逃す手はないってね!」

美森「……っ……銀、あなた……」

友奈(東郷さんはそれ以上何も言えず、銀ちゃんは何故か夏凜ちゃんの前に進んだ)

銀「夏凜さん。申し訳ないですけど、刀を一本お借りできますか?」

夏凜「……あんたまさか、それで戦うつもりなの? 無謀よ! そんなことに貸せるわけないでしょ!」

銀「いくらなんでもアタシもそこまでじゃないですよ。それに今のバーテックスが神樹様だけを目指して進んでいるとは言っても、流石に護身用の武器くらいないとアタシの身も危ないです。そうは思いませんか? さっきみたいに精霊を借りるのって、本格的な戦闘中だと無理でしたよね?」

夏凜「……一理は、あるわね。……はい、一刀預ける。私の判断で、刀を消すことができるってことは覚えておきなさい。あと、それはちゃんと返してもらうから」

銀「あはは、最後の部分はちょっと約束できないです。でも、その代わりと言ってはなんですが──お見せしますよ」

友奈(そして、銀ちゃんの顔がいつもの元気な女の子のそれから、──のそれへと変わる)



銀「"今の"三ノ輪銀が行う、最初で最後の変身を!」



友奈(……ああ……)

友奈(どうして私は今の今まで忘れていたんだろうか……? 少し前までの私なら覚えていたのかな? でも、少なくとも、今の私がこの瞬間思い出したことに何も変わりはないんだよね……。銀ちゃんの強い意志を秘めた瞳を見て私は、はっきりと思い出していた。……二年前、同じ瞳をした勇者に……そうだ、私は強く憧れたんだ!)



銀「行くぞ──鈴鹿御前」



夏凜「見たことのない精霊……! 何で? 何で銀のところに!?」

千景「私の手甲は精霊の集合体なのだそうよ。なら、その一片は一精霊程度になってもおかしくはないでしょう? 破片しか取り出せなくて、繰り返し使うことの出来ない消耗品にはなってしまったけれど、この一幕で使うのならそれで十分。精霊と"本来の三ノ輪銀"が所有した勇者装束の一部、その媒体さえあれば、勇者への変身は十分可能となるのよ。……初代勇者が残していた書物からもそれは明確な事実で、すでに実証も済んでいる」

千景「だから」



銀「──これがアタシたちの初陣だッ!」



バシューッ!

千景「三好夏凜、目に焼き付けておきなさい。先代勇者三ノ輪銀のその姿を!」

夏凜「ま、まさか……銀が、私の……!?」

友奈(銀ちゃんの全身が一瞬にして炎に包まれる。だけど、その火はさっきまで見ていた地獄のような炎じゃなくて、力強くて優しい赤。銀ちゃんの魂のように美しい炎がさらに激しさを増した。三つの勾玉模様が宙に浮かび上がり、回転しながら炎をさらにまき散らしどんどん加速していく)

友奈(そして、炎の中から人影は現れた。赤い装束に身を包んだ──そういうことだったんだね──夏凜ちゃんと同じ服の勇者が、そこには立っていて……)



銀「──今度こそ守ってみせる! そしてアタシは、皆と一緒に帰るんだッ!」



友奈(二つの大斧を構えた勇者としての銀ちゃんが、目の前に居る。それは、私が憧れた勇者との二年ぶりの再会、だった)






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