402: ◆7Ub330dMyM[saga]
2018/01/28(日) 19:36:14.57 ID:vdGmdMVbO
【数時間後 クイーンズベル城 客室】
ジャン「――せ、洗濯バサミはだめだっ!」ガバッ
メイド「目が、覚められましたか……?」
ジャン「こ、ここは……? 知らない天井だ……」
メイド「姫さまと通路で会ってから、しばらくしてからこちらの客間にお通ししたのですが」
ジャン「お、お前は……姫……思い出したぞ! なぜ俺がここにいるのか!」
メイド「そうですか、よかったです。睡眠中もなにやらうわ言のようにうなされていたので!」
ジャン「(誰のせいだと思ってやがる!)……し、失礼。取り乱してしまい、申し訳ない」
メイド「起きたばかりで、このようなことを申し上げるのは、大変恐縮なのですが」
ジャン「あ、あぁ、長居しすぎたか。こちらこそ――」
メイド「いえいえっ! そうではありません! 本日はお泊りくださいませ!」
ジャン「泊まる? いや、それはご迷惑では」
メイド「申し訳ございません。王に、国王様に今回の使者様のご来訪を報告致しました」
ジャン「(あー、王っていうと、気さくなおっちゃんことか。10年前だからなぁ、顔もあやふやになっちまってるが。じいちゃんになってんのかね)」
メイド「隠密だというお立場を知りながら。責任は全て私にございます」
ジャン「……いや、バレてしまったのならば仕方のないこと。体裁さえ守っていただければかまいませんよ」
メイド「ありがとうございます。城内、街はご自由にご覧くださいませ」ホッ
ジャン「(泊まりの上に行動制限もなし、か。それだったら大義名分のもとゆっくり鏡を探せるな)」
メイド「あの、実は、お伝えしたいことがもうひとつ」
ジャン「ん?」
メイド「姫さまでございます」
ジャン「(かーっ、かーっ、またあいつかよ。顔も見たくないわ)……聞きましょう」
メイド「姫さまを、悪く思わないでくださいまし」
ジャン「……?」
メイド「本来は、とっても心お優しいお方なのです」
ジャン「(ないね)」
メイド「淑女たる教育、求められる姫というお立場、そして……政略結婚の道具。18の年齢にかすにはあまりに重すぎる重圧……」
ジャン「(まぁ、一国の姫だからなぁ。勇者という立場を冠する者として同情はするけど……政略結婚?)」
メイド「ハーケマルとクイーンズベルは長年築いてきた地位が、秩序がございます。それはなにを優先しても守られなければならない」
ジャン「待った……ごほん、待ってくれ。政略結婚と?」
メイド「……っ! ち、違います! 姫さまはまだ会ったことのない王子を悪く言ってるわけでは!」
ジャン「ハーケマルの王子と?」
メイド「会えばきっとお互いを知るきっかけになります! 姫さまはとっても魅力的で!」
ジャン「(縁談か……なぁるほど、だから俺がハーケマルの使者だと聞いて機嫌悪くしやがったんだな)」
メイド「ですから……その、先ほどの無礼はお許しいただけると」
ジャン「(そんでこいつは、さっきのを“なかったことにしてくれ”と打診してるわけだ。ようするに、報告すんなと、王子に)」
メイド「いかがでしょうか?」オズオズ
ジャン「……元よりそのつもりでした。発端は私の無礼のせいなのですから」
メイド「こちらこそ。王様よりは丁重におもてなしせよとのご命令を受けております」ホッ
ジャン「(あーあ、安堵した顔しちゃって。こりゃこの縁談、よっぽど重要みたいだな。ハーケマルとクイーンズベルか……)」
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