六花「勇太をなんとしてでも独占したい!」
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66: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:27:34.87 ID:6rZ5mY140
第6話 「ラグナロク」






ギャラルホルンの笛が鳴る。


なぜか気になって夜空を見渡す。
空気が静かだ。
思ったより静かだ。
まるで空気が死んだように感じるな。いや、静かすぎないか。
すると突然大量のカラスが鳴きだした。カァカァカァと激しく、不安を煽るように、または誰かを守るように。その突如の現象にビクついて六花と顔を合わせて森の方を見た。森の左右を見たけどカラスの動きは全くない代わりに暗くて何も見えない。大きくてうるさい音が頭の中に響いていく声に耳を塞いで、しばらくすると突然泣き出すのをやめて一斉に静まり返る。徐々に静まるのではなく一斉に。明らかに夜明けが近づいたから活発になる声じゃなかった。むしろ悲鳴に近かった。理解不能な自然現象に俺たちは気持ちを頷いて確認し合う。
何もない。何も聞こえない。でも明らかに聞こえなさすぎる。
この何も見えない真っ暗な夜空の中なのに、何もないのに何かがいる。
胃がキュって痛くなった。汗がたらたら流れる。呼吸が酸素を求めたがる。本能的危機感。
急にふわっと少し風が強くなる。崖の向こうの真っ黒いおそらく山や川から風が吹いている。
俺と六花は茫然として、逃げたくもあったがなぜかこの光景をこの目で確認したいと思った。

何かが始まる。
何かが起ころうとしている……。

カウントダウンが始まる。勘だ。

6………………………………!
5………………………….!!
4……………………!!!
3………………!!!!
2…………!!!!!
1……!!!!!!




変な音が聞こえる。

変な音が。
だんだん強く!
工事現場の音のような。牛のもうという低い声のような。仏教のお坊さんの低い声のような。船の沈むときのきしむ音のような。怪獣の弱ったときの声のような。今の人語では的確に合わせられない音が響いている!
一度鳴っては止み、また一度鳴る。それの繰り返し。
こんなときにこんな山全体に音を出す人なんていない。絶対無理だ。
不気味な音が山にこだまする。あんなにバカ広いのに空にこだましている。でも暗すぎてどこで発生しているか分からない。山と空の境界線を見ても格別変化は見当たらない。
いったい何が起ころうとしているんだ……。周りの人の騒ぎ声の一つもなくただ俺達2人だけなので余計に精神が凍る。先に殺されるとしたら真っ先に俺たち2人だ。張り詰める凍った空気の中闇の中が叫んでいる。
地震のようなゴゴゴッのような音も多重に加わる。
ドン。ドン。ドン。という太鼓か大砲の打った連続した低音も鳴り響く。
理解不能な不協和音の総演奏。
明らかにやばい!逃げたほうがいい!
暗闇の中で早期に察した。
さっさと荷物をまとめて早く出よう。
すると仏教徒のような、巨大な声が届いて思わず体を止める。逃げたら殺される。
それが足を固くした。
いや、でもあり得ないはずだ。自然なら自分が動かないかぎり何もできないはずだ。
相手が死という概念ならまだしもたかが巨大な音が耳に入るだけで死ぬなんてことはない。
その音を耳にしながら、その死を予感する雰囲気を受け入れたくなくて、一人俺の草花を踏む人工音で台無しにするムードを作ったが、あの音より極小粒だと知ると逆に怖くなり、俺は急いで荷物を取りに行く。
鳴っては終わり、終わってはまた鳴る。


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