6: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:48:03.63 ID:6rZ5mY140
第2話「ダーク・ディスティニー・エクスペリエンス(世界がおままごとをする日)」
悪夢を見た。俺は暗闇の中でう〜んう〜んとうなされる自分、その光景を見る自分がいる、という光景を遠くから見ているというなんとも誰得な気持ち悪い夢を見た。心象は最悪だ。ん、何か音がするな、行ってみようと思うと世界が白くなり。
六花「ゆうた! ゆうたー!」
ん、ここは、現実世界……?
六花「ゆうた?」
目が開く。目の前には巨人のようなふるふる動く目が映っていた。
うわあああああああ!!!
ウサギもびっくりな高速跳力で俺の尻もちを一秒で高く上げ、逃げ足が光り、俺の手は一番遠くに退いていた。あ、とその巨人の姿を観察すると、なんだただの六花か驚かすなと、びっくりで心臓止まりかけになった脳はお怒りになる。
意外な反応すらしない六花は俺に目をくれず、俺のいた逃げる前の机を見渡し特にその絶対に見てはいけないシリーズの資料に目を通しそうになる。やばいーやばいー!!!
見ちゃダメえええええええダメなのおおおおおおお!!!!!!
六花もドン引きするレベルの速さで手で覆い隠し、最近暑いよなと会話しながら資料を集め本の下敷きにした。はぁ、はぁ、はぁ、これなら見れない。よし勝った!
六花は無言であった。恥ずかしい恥ずかしいバレバレじゃねえかよ!!
終始無言の微妙な緊張感が漂う。うっしまった!鳥の鳴き声が聞こえる。無言タイムの中、その静寂に開口したのは六花のほうだった。
六花「今日のデートってどうなったの?」
ん?あれ?変だぞ?まさか……まさか!
俺は時計を慌てて確認する。時計の針は残酷にもAM9時を指していた。
ああああああああ、デートが!動物園がー!ナガシマスパーランドがー!あれだけ朝早く起きて余裕をもって最後の選択をしようと思ってたのに!
というか何で俺の部屋に勝手に入ったんだよ!!今頃気づいたぞ!入るなよ!
俺の頭をわしゃわしゃ発狂する様子を、冷凍庫のような視線で向けられた。
六花「待ってるよ」
と、怒るのかと思いきや冷静な目つきで、某ヒューマノイドインターフェイスのような眉のびくともしない蒼い不変の瞳で俺に言い放ち、そして去った。
扉の閉まる様子を見ると、一人ボケっと見てる自分を知り頬をはたく。やってしまったのは仕方ない。やらなくちゃな。
早速デートに合うように俺も変身をしよう。お風呂に入り大丈夫大丈夫と唱えた後歯磨きをして、六花に見せたかったお気に入りの、闇!Tシャツ!冬バージョン!を着て、復旧不可な計画を再度立て直す。終わったらリビングに朝食がある。朝早くから樟葉が温かい愛をこめて作ったものだ。そのオムライスをむしゃむしゃ食べているがそれでは寂しいのでTVをつける。するとニュース番組に出くわした。
「では次のニュースです。最近世界中で観測されるようになった謎の音波についてです。俗称アポロカリスティックサウンドと呼ばれる音波が動画投稿サイトなどで話題となっております。こちらがその映像です。調査した地質学者の研究によりますと、大陸プレートの断層のズレを引き起こした際に宇宙空間へ反射した振動のサインの現れではないかという報告が上がり、あの東日本大震災とも強い関連性があったのではないかとの懸念がされております。地震と音波の関連におけるメカニズムについて、政府は全国の地質学者や海洋学者等を招集し調査会議を開く予定です」
へえ、アポロカリスティックサウンドかぁ。六花が聴いたら喜ぶだろうな。謎の現象とかってゆうた!ゆうた!ってキャッキャ言ってさ。思い出すだけで世界が喜びの黄色一色になるだろうな。まあでも頑張って日本の安全を守ってほしいとは思う。
今の時間が分かったことに満足した俺はTVを消して集中的に食べ続けようとする。だがそこで現在中学生でありその背丈を持つ妹の樟葉がやってきた。樟葉にどうしても六花の侵入経路について気になることを訊ねる。と、思ったけれどなんだか激怒している様子である。
樟葉「お兄ちゃん!六花ちゃんがね、まだ来てないですかってわざわざ私の方に尋ねてきたんだよ!悲しい顔してたよ!何してるの!」
え、あいつロープで勝手に入ったんじゃないのか!?上の七宮の部屋から勝手にロープで窓からって思ってたけど。俺と六花は同棲だけど、まぬけな寝顔まじまじとみられるのだけは嫌で金輪際ロープを使うな!って言ったきり夜どこも鍵をかけてるけど、たまたま昨日机の上でそれどころでなく爆睡したってことか。あいつ注意をちゃんと守ってたんだな……。
勇太「ごめんごめん。後で言っておく。樟葉にも迷惑をかけたごめん」
樟葉「人と用事するのに寝坊なんてお兄ちゃん失格だよ!」
すまない、ほんとすまないと謝罪し、オムライス難山を直視し高速でかきあげ口にほおばる。胃の中で膨らんでいくスライムの暴れる感触がして食べた気がしない。
目を横にやると樟葉は人差し指を高く上げ、そうだー、と思いついたようだ。
樟葉「お兄ちゃん今日学校じゃないの?」
え?
作業が止まる。今日は日曜日だよな……?
え?と二人の顔が合う。心配になり樟葉に体の向きを合わせると、樟葉は、あ、と思い出した。
樟葉「ごめん!なんか勘違いしちゃったみたい。てっきりお兄ちゃんが変な格好しているから中学の時思い出しちゃって。ははー」
くずはー。顔が赤いぞ。
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