5: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:07:19.31 ID:dxik6X9do
今回の舞台はあるひとりのアイドルの物語。
彼女は、彼女の支えとなる存在と、仲間たちと成長をしていく。
この子はきっと真面目さゆえに不器用な子で、それでいて───。
もうそれなりに長いもの。劇場の舞台の上で他人を演じることには慣れている。
6: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:08:13.89 ID:dxik6X9do
*****
その劇場はとても大きなものだった。
7: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:08:41.97 ID:dxik6X9do
その舞台は何事もなく、いつもと同じで、喝采のもと幕が下ろされた。
たくさんの拍手のなかカーテンコール。私の心情はあずかり知らぬままに。
そのとき、気がついてしまった。
8: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:09:12.26 ID:dxik6X9do
舞台から下りていつものようにスタッフさんに挨拶をして。
今日はいちだんと「彼女」の心情が現れていた、なんて評価もいただいた。
お礼の言葉だけ伝えて、私はそそくさと控室へと向かっていた。
9: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:10:11.21 ID:dxik6X9do
控室のノブが冷たいように感じられた。
あたりを見回してから、音をたてないようにそっとドアを閉めた。
メイクを落とし、衣装を着替えて。そうすると大女優馬場このみはいなくなる。
……結局のところ、私はどうしたかったんだろう。
10: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:11:32.91 ID:dxik6X9do
ふと台本が目に入り、そっと手に取った。
「いっそ本当のアイドル、だったら───。」
ぱらぱらとめくり、目を閉じて。
11: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:13:24.42 ID:dxik6X9do
それからずっと時間は流れて。
とある春の日。また新しい演者であの作品が演じられることが決まった。
「私が、主演に……?」
12: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:14:52.19 ID:dxik6X9do
私の肩書きに「元」がつくようになってからも、もうそれなりに経ってしまった。
演出家のかたにお願いをして、今はこの舞台に特別に関わらせてもらっている。
「あの往年の大女優・馬場このみが協力」だなんて、そんな触れ込みさえ出まわってしまっている。
13: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:15:38.71 ID:dxik6X9do
「ホントウノワタシ」。
そう書かれた台本に琴葉ちゃんはじっと目を通し、「彼女」と向き合っていた。
何度も何度も表現を確かめ、時には身振り手振りを伴って。
それを横目に、私もまたもう一度読み込んでいた。
14: ◆Kg/mN/l4wC1M
2018/01/05(金) 19:19:08.23 ID:dxik6X9do
おしまい。元大女優馬場このみ。よろしくお願いします。
15: ◆NdBxVzEDf6[sage]
2018/01/05(金) 19:59:02.21 ID:Wtx4WG0A0
元大女優激戦だね
乙です
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馬場このみ(24)Da/An
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