北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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3: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 21:31:24.01 ID:vyCd+JK40
 胸がどきんとした。

「素質って……アタシが?」

 男がうなずく。

 やめておけ、と頭の中で声がする。変な希望なんて持つな、傷が深くなるだけだ、と。

「……でも、アタシさぁ、特訓とか練習とか、下積みとか努力とか、気合いとか根性とか、そーゆーキャラじゃないんだよね。体力ないし。それでもいい?」

 アタシは少しおどけたように言った。つまり「その気はない」ということだ。
 言ってしまってから、かすかな後悔が心をよぎったが、

「いいよ」

 男はこともなげに答えた。

「……いや、いいわけないでしょ」

「いいよ、本当に。あ、悪いけど今ちょっと時間がなくて、その裏に地図載ってるから、興味あったら明日の午後に来てね、それじゃ」

「え……いや、ちょっと…………えぇ?」

 男の背中が遠ざかり、雑踏に飲み込まれる。
 ひとりぽつんと取り残されたアタシは、手に持った名刺を裏返した。裏面には、男の言っていたように簡単な地図がプリントされていた。サイズ的な都合だろう、かなりの部分が省略されていて、駅と道路と事務所しか載っていない。駅のどの出口から出ればいいのかもわからないような、簡単な地図だ。

 ……アイドル、アタシが?

 まさかね、とため息をつきながら、小さく首を横に振った。
 そんなことあるわけない。きっとこれはなにかの間違いだ。

 アイドルになんて、なれっこない。アタシは、そんな人間じゃないから。



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