北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
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2: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 21:30:00.39 ID:vyCd+JK40
「少し時間いいかな?」

 学校の帰り道、あてもなくぶらぶらと街を歩いていると、そんな声が耳に届いた。
 目を向けるとスーツ姿の男性がいた。年齢はよくわからない、20代中盤ぐらいだろうか?
 しゃれた仕立ての黒いスリーピースのスーツは、男性服にくわしくないアタシでも安いものではないとわかる。

「ナンパならどっか行ってよ。そーゆーの興味ないから」

 正直なところ、あまりいい印象は持たなかった。
 男は、いかにもお金のかかっていそうな格好をしているわりに、やたらと穏やかな顔つきをしていて、声からも妙な親しみやすさを感じた。それが、相手に警戒心を与えないよう、意識的に作っているものに思えたからだ。
 男は苦笑を浮かべて、「ナンパじゃない」と言った。

「違うの? じゃあ、どちらさま?」

 男は返事の代わり、とでもいうように上着のポケットから名刺入れを取り出し、一枚抜いてアタシに差し出してきた。
 ふだん名刺なんて目にすることはないけど、たぶんよくある一般的な形式だと思う。社名と役職と名前が載っている。『Cinderella Girls Production』、女性アイドルを専門とした大手の芸能事務所だ。

「……芸能事務所の、プロデューサー?」

「知っててくれてよかった」

 当たり前だろう、と思った。CGプロと通称されるその事務所は、芸能通でなくとも、名前ぐらいは誰でも知っている。

「そのプロデューサーさんが、アタシになんのご用?」

「アイドルにならない?」と男は言った。「君には素質がある」



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