26: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 21:15:00.55 ID:bbgcA4Fi0
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――そんなロコが、みんなに何を伝えられたって言うんですかぁ……っ!!
驚くほどに、どす黒い声が出た。
きっと、傷つける言葉だ。わかっていた。八つ当たりですらあるだろう。それなのに、信じられないほどストレートに、効果を発揮する言葉を使っていた。
こんなことだけは、思ったままを伝えられるんだ、と。そんな、何も嬉しくない発見だった。
ロコは雪歩に伝えた言葉の通り劇場に行かず、レッスンもさぼって、アートを作り始めた。みんなを裏切っているという事実に胸が痛んで、視界が滲むことも一度や二度じゃなかったけど、どうしようもなく楽しかった。楽しくて、時間を忘れて熱中してしまう。苦しかった。
たくさんのメールやメッセージが届いた。見るのが怖くて、通知を切って開かないようにした。しばらくして着信が来るようになったから、家の電話にはかけないでくださいとだけメールを打って、スマートフォンの電源ごと切ってしまった。
自分の部屋にこもってアートを作って、数日が過ぎた。次第に楽しさは薄れていって、寂しくなってきた。完成したアートたちだって誰にも見てもらえていないし、きっと寂しいだろう。
でも、見てくださいなんて、今のロコに言う資格があるはずもないのだ。がむしゃらに思うままをぶちまけたアートは、悲しげな表情をしているようにロコの目には映った。
みんなのためにアートを作りたい。たったそれだけのことだったはずなのに。
こらえきれなくなって泣いてしまった。その願いはロコにとって、とっくのとうに矛盾したものになっていた。アートを作ることと、みんなのためになることは、相容れない。
作業机に突っ伏して、嗚咽交じりでみんなの名前を縋るように呼んで……そのまま眠ってしまってからは、アートを作ることもなくなった。外から届く音をヘッドホンで遮断して、抜け殻みたいにみんなで歌うはずだった曲を聞き続けていた。
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