1: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:05:55.37 ID:amdXqONW0
瞳を閉じた暗闇の中で、薔薇の甘い香りが咲いた。
鼻孔を満たす柔らかな味わいに、一度目覚めかけた意識が再び沈殿しようとする。
そう、今私は眠りに落ちている。
仮眠を取るために瞳を閉じ、どれぐらい時間が経ったのか。
携帯のアラームは聞こえないが、もうそろそろだろう。
今少しこのまどろみに囚われたいのですが、それももうじき終わり――
そのことは分かっているのに、意識が再び途絶えようとした時のことでした。
頬に、柔らかくみずみずしい感触がしたのです。
それが何であるのか、一瞬考えることができませんでした。
そしてそれがあるモノ――口づけではないかという疑問が浮かんだ途端、意識が急速に覚醒し、急な目覚めに体が驚いて痙攣する。
何とか瞳をこじ開けて目に映ったものは、今にも閉じようとしているドアの向こう側でわずかに見えた長い黒髪と、白く細い指先。
ガチャリと閉まるドアの音をどこか遠くの出来事のように聞きながら、呆然と自分の頬をなでる。
夢などでは決してない、鮮明な感触。
私は、頬に口づけをされた。
では誰に?
今の時刻は19時。
この時間帯にここを訪れることができるスケジュールの人たちの中で、ドアの隙間から見えたわずかな特徴に一致する人はいないかと考える。
一人だけいました。
そして出てきた答えがあまりに有り得ず、愕然として口から漏れてしまう。
「島村……さん?」
正解だと言わんばかりに、携帯のアラームが部屋に鳴り響いたのでした。
島村卯月
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2: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:06:44.47 ID:amdXqONW0
※ ※ ※
「あ、プロデューサーさん!」
3: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:07:24.49 ID:amdXqONW0
※ ※ ※
「送っていただいてありがとうございます」
4: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:08:10.23 ID:amdXqONW0
「ごめんなさい、プロデューサーさん……」
衝撃から視界がグニャリと歪むなか、畳みかけるように島村さんが謝罪の言葉を口にします。
5: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:08:42.09 ID:amdXqONW0
島村さんの一言で、耳触りな幻聴がパタリと止まりました。
様々な色を混ぜ合わせた絵の具たちが、黒一色になる直前のようであった視界が一瞬で正常に戻る。
イタズラの内容は……私の頬を、指で突いたこと?
6: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:09:15.08 ID:amdXqONW0
※ ※ ※
「送っていただいてありがとうございました!」
7: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:10:04.49 ID:amdXqONW0
「え、ええとですねっ。だから、プロデューサーさんの顔が真っ赤で……か、顔を覆っていてよく見えなかったんですけど、恥ずかしそうにしているのがわかって、その――」
迷っている中で気づけたのは、どうやら島村さんも私と同じぐらい混乱されていることです。
ワタワタと手を動かしながら、身振り手振り説明をされているのですが、頭がまるで追いつきません。
8: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:10:56.37 ID:amdXqONW0
※注意
ここから先はオマケで、武内P視点ではなくしまむー視点です
今回の話の真相を知りたくない人は見ないことをオススメします
9: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:12:17.80 ID:amdXqONW0
※ ※ ※
「はぁ……」
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