571: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2018/08/07(火) 23:04:06.77 ID:5Rjb8J6V0
口角が、思わず吊り上がる。鳳翔さんの作った絶品卵焼きを初めて食したときと同じ様な、歓喜と至福の笑みを浮かべてしまうのを止められない。
そしてそれは、私だけではなかった。
「………」
国語辞典の「マイペース」の項目に、関連単語としてその名前が載っていてもおかしくない雲龍も。
「まだまだ、新しい“遊び”、できるっぽい?」
「……えぇ、できるわ。まだまだ、沢山」
映画【ミスト】で絶叫し、【エイリアン】で号泣し、【プレデター】で不眠症になり、【キャビン】で卒倒し、【パラノーマルアクティビティ】はパッケージを眼にした瞬間粉砕を試み、【ムカデ人間】で深刻なトラウマを抱えた夕立も。
日頃は、提督からZ級映画講義を受けているときくらいしかまともに表情筋を動かさない──正直本当にあの趣味は理解できない──不知火も。
「っつー……駆逐艦の可愛いおふざけにアイアンクローなんてするかい普通?」
ついさっきまで、提督のお仕置きを受けていた時雨も。
( T)「一般的な“可愛い駆逐艦”とやらがマッチョの締まりのいいキツキツのケツ穴に指突っ込みたがるわけねえだろ」
「言い方!」
そして恐らくは、マスクの下の提督の顔も。
誰もが、私と同質の………或いは、私以上の、殺意と歓喜が浮かぶ笑顔で眼前の海を眺めている。古鷹だけは少し困ったようにまなじりを下げていたが、私達を咎めるようなことはない。
艦娘が正義の味方と信じる人々も、艦娘を前大戦の亡霊だと忌み嫌う奴らも、私達の様子を見ればきっと口を揃えてこう言うだろう。
何故、そんな表情(かお)が出来るの?と。
もしも本当にその質問をされる機会があったなら、私達は迷わずこう答える。
楽しいから、と。
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