325: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/03/03(土) 22:30:51.07 ID:sUJQuCNI0
日屋根さんが最後っ屁の12ゲージ弾を放って内側に転がり込んだ直後、隔壁の降下が一気に速まる。そこから通路が遮断されるまでにほんの数秒とかからなかったため、「見た」とは言っても僕が“それ”を視界に収められたのはほんの一瞬のことでしかない。
だけど、その一瞬で十分だ。あんなものを長々と見せられていたら、僕のSAN値はきっと1d100のロールを免れなかったに違いない。
あんな、おぞましいモノ。
『『『アアアアアアアアアアッ!!!!!』』』
傷口に湧いた蛆の如く、寄り合い絡み合いながら迫ってくる白く長いナニカ。錆び付いた扉の蝶番が軋む音を何百倍にも増幅させたような叫び声を口々に上げて、それらの群れが眼前で閉じた隔壁に殺到する。
『『アァアアアアアッ!!!』』
『『ギィッ、ギィッ!!!!!』』
「総員構え!億が一破られたらとにかく撃ちまくって食い止めろ!!」
壁を破ろうとしているのだろうか。硬い打撃音が、隔壁の向こう側からそれらの鳴き声と共に聞こえてくる。指揮官と思われる保安官の号令に従い、隔壁の内側に待機していた人員が一斉に武器を構えた。
40人ほどが集まっているようだが、保安官の制服を着ている人間は全体の半分程度。他の服装は様々で、ムラカミさんたちを先程迎え入れた二人も含めて船舶科生徒の姿もちらほら見える。
装備も日屋根さんのモスバーグM500と一部の機動保安隊員が構えているM&K MP5数挺が目立つ程度で、あとは全て小口径の拳銃。それとて所持しているのは全体の1/4に過ぎず、残りの人員が構えているのは────警棒やバット、上等なものでせいぜい不審者取り押さえ用のさすまた。
あの化け物の大群を抑えるには、役者不足どころの話じゃない。かといって、僕の方で力になれることがあるかと言えばそれもNOだ。
ただ、隔壁の強度が奴等の力を上回っていることを全力で祈る他なかった。
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