163: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2018/01/22(月) 01:52:59.65 ID:0WyQqsPm0
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』
「来るぞ!撃t」
怪物の内一体が、予備動作も無しに首を伸ばしてくる。バグンッと音が鳴り、拳銃を構えようとした保安官の首が掻き消える。
この瞬間、狩りは機械的な殺戮に変わった。
「うわっ、うわっ、うぉあああああっ!!!?」
「ひっ……!?」
まるで、鳥が足下の虫を啄むみたいに。
化け物達は首を伸ばし、獲物を───つまり樹木園の中を逃げ惑う私達を、追い立て、絡め取り、食らって行く。二田さんたちが必死に射撃を加えようとするけど、凄まじい速度で自由自在に動き回る怪物に翻弄されて照準をろくに合わせることすらできない。
「く、くそ、当たらない────ぁあああああああっ!!!?」
化け物を捕捉しようとしていた保安官が、後ろから噛みつかれて高々と持ち上げられる。咀嚼音が頭上で聞こえると同時に断末魔はなくなり、ぼとりと彼の下半身が地面に落下してきた。
“暴徒”を殲滅したか撃退したらしい機動保安隊も追いついてきたけど、彼らも二田さんたち同様まともな迎撃はできていない。早々に一人が、牽制射撃を加えようとして襲撃してきた化け物に攫われた。
「正門だ、正門の方に向かえ!樹木園の中だとまともに逃げられない!」
「自殺行為です!正門にも深海棲艦がいるんですよ!」
「逃げ道がない……救助は……」
「どうしたらいいのよ……どうしたら……」
悲鳴と怒号が飛び交い、誰も彼もが逃げることも戦うことも許されずに理不尽に殺されていく。
私自身も、最早どうすればいいか解らない。目の前の惨状を、ただ呆然と眺めている。
(ああ、そっか)
ぐるぐると纏まらない思考の中で、混乱する脳の奥で、妙に冷静な部分がぽつりと呟く。
皆、ここで死ぬんだ。
「アリサさん!発煙筒を使って!!」
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