79:名無しNIPPER[saga]
2018/01/05(金) 21:53:00.08 ID:BSpRr3gRo
*帰り道
千景(三ノ輪さんを乃木園子の病室に残し、私は夕焼けの中を一人歩いていた)
千景(話はまとまり、三ノ輪さんの協力を得て明日から私たちはそれぞれ動いていく。私の肩に下がるのは三ノ輪さんから預かったポシェット。中には少し古びてしまった『鷲尾須美は勇者である』のノベライズ。……私の体感時間では一ヶ月、けれどこの本は二年の月日をこの世界で過ごした換算となる)
千景「……」
千景(不思議な感慨のような感情が胸の中に微かに浮かんだ。それは回顧を呼び起こし、直近の記憶から順に想いを巡らせていく)
千景(先ほどの病室での場面。三ノ輪さんは私の素性に終始戸惑ってはいたが、一方で一貫して協力的でもあった。わすゆの内容がそれだけ悲惨であるのか……あるいは、本当にあるいはの話であるが、この世界で三ノ輪さんと築いてきた親交が、目に見えない確かな何かが、彼女の心情に語り掛けた結果……だったのかもしれない)
千景(私らしくない思考だと思った。……そして、これはさらに輪をかけて私らしくない感傷)
千景(今朝からずっと頭の中に浮かんでいた場面。それは、そう、小雨の屋上で見た風先輩のあの作り物のような笑顔で──)
友奈「あれ? ぐんちゃん?」
千景「!? ゆ、結城さん……?」
千景(考え事をしていたからか私の歩みは遅く、振り向くと結城さんの眩いばかりの笑顔が目の前にあった)
友奈「もしかして病院の帰り? 奇遇だね〜」
千景「……ええ、奇遇ね。結城さんは珍しく一人のようだけれど?」
千景(結城さんは東郷さんの家の隣と言うこともあって、基本二人は送迎車での帰宅となる。だからこうして、一人帰宅の途を行く結城さんは非常に稀な姿だった)
友奈「そうなんだよね。今日は東郷さん、ちょっと用事があるらしくて先に帰っちゃったんだ。千景ちゃんも銀ちゃんもお休みだったから、勇者部がちょっと寂しかったかな……なんて」
千景「それは……申し訳ないことをしてしまったわ。そして、重なる時は重なるものなのね」
千景(全員が故意であることは知っていたが、まさか本当のことを結城さんに言えるはずもない)
友奈「だね。でも、こうしてぐんちゃんと会えたから私は元気いっぱいになったよ! ──あ、そうだ! ぐんちゃん、これから私の家に来ない? 旅行の時に言っていたマンガもあるよ?」
千景「ええ! 行くわ!」
友奈「わーい、やったー!」
千景(……反射的に答えてしまったけれど、よくよく考えれば夕食に近い時間帯だった。迷惑になると思いつつも結城さんの嬉しそうな表情を見てしまったら、結局何も言えなくなってしまうのが私なのよね……)
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