【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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80:名無しNIPPER[saga]
2018/01/07(日) 18:19:34.22 ID:ZtE3BbpK0

「……そう。王野さんは、プリキュアをやめると言ったのね?」

「…………」

 すでに声も出せないのだろう。ブレイは涙で揺れる瞳で、所在なげにうなずいた。

「……分かったわ。なら、仕方ないわね。これ以上、王野さんを巻き込めないわ」

 めぐみは優しく、足下の小さな妖精たちに語りかけると、ふたりを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。

「大丈夫。あなたたちは私が守るわ。私はプリキュアをやめたりしないから」

「ゆうき……!」

「フレン、悪く思ってはだめよ? 王野さんは、王野さんなりに考えて、そう決めたんだから」

「でも……!」

 言いかけて、けれどやっぱり、フレンは口をすぼめてうつむいてしまった。何をどう伝えたらいいのか分からないのだろう。フレンの心の中で色々な想いがうずまいて、きっと何を言いたいのか自分でも分かっていないのだ。

「ブレイ。王野さんはどこに行ったの?」

「行っちゃったグリ……ブレイをここまで連れてきて、ごめんねって、それだけ言って、行ってしまったグリ……」

「そう」

「ねえ、めぐみ」

「なぁに?」

 ブレイが泣きそうな顔のまま、問いかけた。

「勇気って何グリ? ブレイは、ゆうきに本当の勇気を見つけたグリ。だからゆうきはキュアグリフに変身できたグリ」

「……そうね」

「ブレイは勇気の王子グリ。けど、分からないグリ。ゆうきは本当に、弱虫だから、臆病だから、プリキュアをやめたグリ?」

 まっすぐな言葉。それはブレイの曇りのない純粋な心をそのまま代弁しているのだろう。だからめぐみもまた、真摯に答えなくてはいけないと思った。

「分からないわ。私は王野さんではないもの」

「グリ……」

「あなたが王野さんの気持ちを考えて、自分で判断するのよ」

「…………」

 人との関わりはとても難しい。だって人は、他の誰かの気持ちなんて、完全には分からないから。だからめぐみにも、ゆうきが何を想い、何を考え、プリキュアをやめようとしているのかは分からない。

「……さ、行きましょう。これからのこととか、話し合わなくちゃいけないしね」

 とにかくめぐみは、ふたりを安心させるために笑みを浮かべた。まだ小さいふたりは今まで色々な苦労をしてきたのだろう。その分、今は自分が安心させてあげなくてはならない。



 そのめぐみの優しさを、クラスメイトは知らない。みんな、クールで知的なめぐみしか、知らないからだ。

 そして、めぐみ自身も自分の優しさを、知らない。フレンやブレイを前にして、気丈に笑える自分の優しさに気づいていないからだ。

 その優しさを知っているのは、自らめぐみを “相棒” といった、あの勇気あふれる少女だけなのだから。



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