【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2018/05/27(日) 10:12:14.42 ID:IIOvQ4Oi0
「お母さんがお迎えに来てくださいね。それでは、お借りしている電話なので、切ります。失礼します」
そのまま、何を言わせる間も置かず受話器を置く。言い過ぎただろうか。
姉たちやクラスメイトに気を遣う必要がないから、やりすぎてしまった気がする。
ふと思う。本当の自分の、こんな冷たい一面を知ったら、家族やクラスメイトの皆はどう思うだろうか。
「……そんなこと考えても仕方ないのは分かってるんだけどさ」
これが本当の自分。
王野ひかるという、自分。
情けないとは思う。
そんな後ろ向きなことを考えていたからだろう。
「……あれ……?」
気づいたときには、世界が変質していた。
それは言い過ぎだろうか。場所が変わったわけではない。何の特質もない廊下のままだ。
けれど、何かが確実に異質だった。
その正体に気づくのに、数秒を要した。それだけ、その変容はありえないことだったのだ。
「色が……」
色が消えた、モノクロの世界。音が消え、寒さも暑さも消えた、異様な世界だ。
すぐ傍にいたはずの店員さんが消えている。
その静かな世界に、まるでひかるひとりが取り残されたようだった。
「……騎馬さん」
ひかるは体調を悪くしていたはじめのことを思い出し、慌てて元来た道を戻った。店の奥から戻ると、やはり客席スペースはおろか、窓から覗く外の景色までもがモノクロに墜ちていた。そして、学校帰りの女子学生たちが大勢いた店内は、いつの間にか空っぽになっている。
「なんなんだ、一体……」
ひかるは焦燥を憶えつつ、席に戻る。果たしてはじめはそこにいた。しかし、とても容態がいいとはいえない様子だ。テーブルに突っ伏し、息は荒い。
「騎馬さん。騎馬さん」
「ん……。ひかるくんか……」
呼びかけると、少しだけ目が開く。
「何か様子がおかしいんです。まるで、色が抜け落ちたように、真っ黒なんです。わかりますか?」
「以前、一度だけ見たことがある。これは、暗い場所。暗い世界。しばらく待っていれば、いつもの世界に戻れる。けれど、怪物が……」
「怪物……?」
「――なるほど。位相をここまでアンリミテッドに近づけても、貴様らはまだ残るのだな」
ゾッと、背筋が凍る。
いつからそこにいたのだろうか。華奢な背格好に漆黒の装い、表情の見えない仮面。そんな紳士が店の入り口に立っていた。
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