【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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名無しNIPPER
[saga]
2018/05/27(日) 10:09:32.80 ID:IIOvQ4Oi0
「それから、ひとつ伝えておくことがある」
「なんですか?」
「昨日はたまたまなんだ。たまたま、偶然、折りたたみ傘をカバンに入れるのを忘れていただけなんだ」
「……はぁ」
なぜ釈明をはじめているのだろう。まったくはじめの言わんとしていることが分からない。
「とにかく、昨日は偶然傘を忘れただけであって、普段の私は忘れ物なんてしないんだ」
「そうですか。まぁ、誰だって忘れ物をするときくらいありますよね」
「……私はそれではダメなんだ。完ぺきでなければ。なぜなら私は――」
「――騎馬家の跡取りで、ダイアナ学園中等部の生徒会長だから、ですか?」
「む……」
言葉を遮ったひかるを、はじめが見つめる。
「関係ないと思いますけどね、そんなの」
「し、しかし、私は……」
折悪く、店員さんがおぼんを持ってくるところだった。
「アイスティーのお客様」
「あ、こっちにお願いします」
店員さんがはじめの前にアイスティーを置こうとするのを止めて、ひかるは自分の手元にアイスティーを置く。
「で、ラテは向こうに、お願いします」
「……はい」
店員さんは得心したような顔で、何も言わずはじめの前にラテを置いてくれた。戸惑っているのははじめひとりだ。
「どうしてだい?」
「べつに。ただの嫌がらせだと思ってくれればいいです」
ひかるは言って、笑った。
「そんなことより、見てみたらどうですか、それ」
「……? あっ……」
はじめがラテに目を落とす。ラテの表面には、クリームで絵が描いてある。それは、犬。まるまるとしていて可愛らしい犬の絵だ。
「か、かわいい……!」
「ふふ。力作です。喜んでいただけて何よりです」
店員さんはそう言って笑うと、ひかるにウインクして去って行った。ひかるは、あんなにウインクが様になっている人を他に見たことがない。
「……気を遣ってくれたのか。ありがとう」
「はぁ? べつに、お礼を言われるようなこと何もしてないですし」
ひかるはそっぽを向いて言った。
「ごちそうになります。いただきます」
「ああ」
ひかるはアイスティーに口をつけた。少しだけ火照った頬に、その冷たさが染み渡るようだった。
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